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黒田くんが着任する前日
初めてエルダーを担当する人たちが集められて
人事から説明を受ける
私の隣には湧が座ってて
所々で寝そうになっているのを
ボールペンでツンツンして起こすなんていう
オプション付き
「あ、わり」
「そう思ってるなら寝ないように頑張ってくださーい」
「それは無理、だって俺、文章見てると眠くなるんだわ」
よくこんなんで営業やれてるなって感じだけど
仕事だからなんだろうなって
いや、エルダー業務だって立派な仕事だけどね
「説明はここまでとなります。
15時に担当する新入社員から電話がかかってきます。
電話研修の一環となりますので、この場で対応いただき
終わった人から退出して下さい」
人事の声とともに騒がしくなる会場
「なんだよ。終わりと思ったらまだあんのか」
「電話研修とか懐かしいね」
「俺、電話は得意だった」
「電話はね！メールの研修の湧ったら
本当に笑ったもん」
新人研修でも隣だった湧
隣の人にメールを送るってのがあって
ペアだったんだけど
漢字が苦手で届いたメールが誤字だらけで
笑いが止まらなかったなぁなんて
時間になったのか周りが電話に出始める
“ブー”という音に反応したけど
私のスマホは真っ暗で鳴ったのは湧のもの
隣でスムーズに話始める湧を横目に
スマホを見つめるけど掛かってくる様子はない
「なに、まだお前んとこかかってこないの？」
電話が終わった湧が声をかけてくる
残っている人たちを見渡してもみんな通話中で
逆にどうしたんだろうと心配になり
人事に声をかけようと立ちあがろうとした時に
ようやく鳴り響く電話
“着信 黒田光輝”の表示を見て通話ボタンを押し
もしもしと言っても返答はなく遠くで何か話し声が聞こえた後
ようやく話し始める黒田くん
声から緊張が伝わってきて
“緊張してる？“とか“私も緊張したんだよ“とか
安心して貰えるようなことも言いつつ
目的だった明日の話をして電話を切った
「緊張してる？私も緊張したんだよかぁー
優しいねぇAちゃんは」
ニヤニヤしながら揶揄うように言う湧
「何言ってんの？って、湧まだいたの？」
「おーいー！心配だったから待ってたのに
なんだよそれ」
「ごめんって！笑」
“そろそろ会場閉めるよー”の人事の声で
慌てて2人で会議室を出た
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作者名：Soda | 作成日時：2022年11月27日 20時
