ラナンキュラス (ページ18)

今日:65 hit、昨日:103 hit、合計:83,052 hit

18 ページ18

俺の様子見ていた長瀬がスマホに表示されている
Aさんの番号を見て“この人？”って聞いてくるから
小さい声で“そう”と答えると躊躇なく手を伸ばして番号をタップした

『え？ちょ、心の準備が！！』

「黒田くんが緊張なんて珍しい。でも大丈夫っしょ〜」

なんて言いながら長瀬が悪気なく笑うけど
スマホの呼び出し音が途切れ“もしもし”と聞こえてくる声
“ほら、出たから早く！“と慌てる俺にスマホを渡してきた

『もしもし、Aさんですか？』

「そうですけど。どちら様ですか？」

久々に聞いたAさんの声にドキドキする

『俺、じゃなくて僕、明日からお世話になる新入社員の黒田です！』

「黒田くんね！初めましてエルダーのAです。
　明日から宜しくお願いします。
　えっと…ちょっと緊張してるかな？」

“私もこの研修の時、緊張したんだ”なんて言ってくれて
俺の声から緊張が伝わったようで気を使ってくれたみたい
そんな優しいAさんの事、単純だけどますます好きになる

それから課題である明日の事を確認し
そろそろ電話を切らないといけない

最初あんなに緊張してたのに
今はこの電話を切りたくないとすら思うけど
“時間なので終わりにしてください”と
講習担当の声が聞こえてくる

『分かりました。ありがとうございます！』

「そろそろ時間だよね。
　明日黒田くんに会えるのを楽しみにしてます。
　私もエルダーになるの初めてだから一緒に頑張りましょう！
　じゃ、講習で電話を切るときのやつやって切ろうか」

『はい！僕も明日楽しみにしています！
　それでは明日宜しくお願いします。失礼します』

Aさんが電話を切る音を聞いて
手に持っていたスマホをそっと机に置いた