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本当はわかってる
応援してあげるべきなんだってこと
だけど…
『ヤダ』
離れたくない気持ちが勝って
Aさんにやっとの思いで伝えた言葉はこの2文字
そんな言葉を連呼する俺は
駄々を捏ねてる子供みたいなことは分かってるけど
言わずにはいられなかった
『Aさん行かないで?断ってください!』
追い討ちをかけるように涙目で懇願して伝えた言葉
俺がAさんの立場だったら
好きでもない男にこんなこと言われても困るだけなのに
『黒田くん、それは無理だよ…』
悲しげにでも強い意志が込められた視線を向けて
俺を諭すように言ったAさん
ああ、だから俺はこの人のこと好きなんだ。
こんな状況だって俺のことを見放せない
優しくて強くてでも変なところで鈍感で
俺が初めて真剣に好きになった人
けど、Aさんが俺のことを
好きになってないことは分かってる
可愛い後輩くらいにしか思われていないことも
でも諦めたくない。
Aさんのこと本当に好きだから。
だから俺、Aさんの夢を応援する。
だって好きな人の夢を応援できないような男を
Aさんが好きになっくれる訳ないからね
『Aさん…
無理なこと言ってすみませんでした。
俺、Aさんのこと応援します!
だからいつかAさんが企画した商品を
俺がお客さんに紹介できるように営業で頑張ります!
だからAさんも企画部で頑張ってください!』
精一杯考えで絞り出した俺の言葉に
“ありがとう頑張るね“と
満遍な笑顔を向けてくれたAさんの顔を見て
これでよかったんだと思うことが出来た
それから2週間が経って
Aさんは企画部に異動していった
残業で俺以外誰もいない事務所
空っぽになった前の席にそっと手を置いて
小さくため息をつくと
「辛かったろ」
現れたのは元木さんで俺の肩に腕を回し慰めてくれる
「ごめん、俺Aの黒田より先に異動の話知ってた。」
『分かってます。Aさんが異動の話を部長にされた日
ご飯に誘ったら先約あるって断られたんで』
「そっか、それは悪かったな」
苦笑する元木さんを見て
なんだろ泣きつきたくなるこの安心感は
『なんかAさんが元木さんを頼りにしてる理由分かりました』
「は?何言ってんのお前」
『あー元木さんが女だったらなぁ』
「バカ言ってんじゃねーよ!お前にはAしかいないんだろ?」
元木さんの言葉に感情が込み上げてきて
空っぽの席に向かって静かに涙を流した
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作者名:Soda | 作成日時:2022年11月27日 20時