七夜目 ページ7
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「……じゃ俺、そろそろ」
「島男、」
「ん？」
「あたしは
、島男のことを心配してる人がいるってこと、忘れないでね」
「…おう」
「っ、それだけ！ちゃんと帰ってきてね」
これが、あたしにできる精一杯
これだけのことしか出来ない自分が悔しくて
涙が出そうになるのをぐっと堪える。
「A、外出てきて」
突拍子もなく島男がそう言う。
話の意図が読めないまま促され外に出れば、何年ぶりかに見る島尾の姿があった。
「な、んでいるの、」
「元々こっち帰ってきててん。したらお前泣きそうな声しとるから…せっかくやし会いに行こうかなぁって思ってん」
そっと、島男に近寄る。
金髪の髪も凛とした顔立ちも変わってなくて、でも身体の所々は前に見た時より逞しくなっていて。
会いたくて、仕方なかった人が目の前にいる。
夢かと思う半分、会えた嬉しさが込み上げてきて
、我慢していた涙が嬉し涙となってぶわっと溢れる。
すると島男が少し腰をかがめて私の顔を覗き込んできた。
「やっぱり泣いとるやん。昔っから泣き虫やなお前」
「っ〜！うるさい！全部全部島男が悪い」
「人のせいかよ！」
「そうだよ、島男が狂気山脈登るなんていうから、！だから、」
「泣かんでや。帰ってくるやんか」
きっとその言葉にはなんの確証もない
そう分かっているはずなのに私は島男のその言葉を信じたいと思っちゃうんだ。
「…本当に、帰ってくる？」
「当たり前やろ。さっきもそう言ったやん」
「そっか、そうじゃんね」
引き止めちゃいけない。
引き止めなきゃいけない。
矛盾した気持ちの中、彼を応援したい気持ちで片方の気持ちをぐっと抑えた。
「久しぶりに会えてよかったわ。Aの顔も見れたし！そろそろ帰るわ！」
「島男！」
「ん？」
「島男、“またね”」
「…おう、“またな”」
手を振る島男に手を振り返す。
少しずつ遠ざかっていく背中を見届けるしか私にはできない。
なんとなく島男に会えるのはこれが最後の機会な気はした。それでも帰ってくると信じているからまだ「好き」だなんて言わない。
島男は狂気山脈に登頂するんだ
笑顔で帰ってきて、また宇都宮くんと山に行くんだ
そう信じて、私は彼の帰りを待つと決めた。
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茜(プロフ) - 紅蓮さん» 私はそのコメントが嬉しくて涙が止まりません…そう言ってもらえるのが書き手として一番嬉しいです！ (2020年5月23日 16時) (
レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮 - 何回見ても涙が止まりません… (2020年5月23日 13時) (レス) id: 437f8327e7 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 不透明さん» ありがとうございます！！拙い文だったかもしれませんが、当時の精一杯の気持ちで書いたので嬉しいです！ (2020年5月16日 16時) (レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
不透明(プロフ) - 島男の最後の「好きだった」のところでもう涙が止まりませんでした！夢主ちゃんの思いと島男の思いに感情移入しちゃって…ほんとに良かったです！！ (2020年5月16日 16時) (レス) id: 187d5f8a14 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 鬱瀬さん» ありがとうございます！！そう言ってもらえると書いてよかったと思えます (2020年5月10日 15時) (レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
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