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まったりした朝を過ごしてのんびりと学校まで来たものの、それでも早かったのか教室には一人もクラスメイトは居なかった。
ギィ、と引いた椅子の音が静かな教室にこだまする。
窓の外を見れば、昇りたての太陽が柔らかく中庭に光を注いでいた。小鳥のさえずりが微かに聞こえ、春風がほのかに木々の葉を揺らす。校門の方からは生徒と思われる明るい声も聞こえてきた。
目を瞑り、それらに神経を集中させる。
この、朝の爽やかな音が好きだ。
早朝、誰もいない教室で思いを巡らせるこの時間が好きだ。
なんとなく、自分の感性のようなものが研ぎ澄まされていく感覚がある。
「…A、」
そんなことを考えて眠気すら覚え始めていると、後ろからそう声をかけられた。
突然のことに驚き、びくっと肩を震わす。
『っくりした…。…あぁ、よっしー、おはよう。』
「おはよ。何してんの？」
『あー、…瞑想？』
「瞑想…？？」
何瞑想って、とよっしーは首を傾げているけれど、先程の時間を喩える言葉を私は瞑想以外知らない。…いや瞑想ではないことは重々承知なんだけど、私の知る一番近い言葉で喩えると“瞑想”になるんだよ。許して。
訝しげな表情で私を見つめるよっしーに、“あー”と言って無理やり話を逸らす。
『ってか、よっしー早いね？何かあるの？』
「いや、僕いつもこれくらいだよ？」
『えっ嘘、中学から？』
「うん。早めに来て勉強したくて。」
『うっわぁ真面目〜…。』
うるさいな、と笑ってよっしーは自分の席に座ると、ノートとテキストを出して黙々と勉強を始めた。
よっしーは中学の時からとにかく努力家で、親友と呼べるほど仲がいいわけでもなかった私でもその努力がわかるくらいだった。
休み時間も、間があれば数学のテキストや漢検の問題集を読み、中二で漢検準一級を取得したときはクラスの皆を驚かせていた。
それでも驕ったり他者と一線を引いたりすることの無かったよっしーはクラスの人気者で、確か一、二回は告白もされていたような気がする。
人懐っこいし、話をするのも聞くのもうまい彼は、きっと高校でも人気者になるだろう。
よっしーは勉強を、私は何をするでもなくぼうっと外を眺めているうちに、ちらほらとクラスメイトが集まり出した。
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作者名：せるふぃ | 作成日時：2021年1月23日 11時
