【QK】夏の残響に耳を澄まして【学パロ】 (ページ6)

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元倉家、自室。

ベッドの上で、今日飯田先生に配られたプリントを広げる。

奨学金がどうちゃらとか、PTAがなんちゃらとか。それらの何かよく分からないプリントたちには目を通すことすらせず、ベットの端にまとめる。

…だってどうせ私に関係ないし。

その中の一枚。一つだけA4サイズの学校新聞のようなそのプリントには、でかでかと野球部と吹奏楽部の写真が載っていた。

そうそう。これが見たかったんだ。

部活動の様子を撮ったそれらの写真の隣には、“甲子園出場！”だとか、“西関東大会銀賞！”みたいな功績がずらりと並んでいる。
その端の端の端の方。【その他文化部】の欄に小さく写真部の名前があった。もちろん功績だの何だのは書いていない。

…まぁ、そうだろうな。

あの文化祭の写真を見て何となく分かってはいたけれど、ちょっとした期待を持って見た分、いざ形で表されてしまうと少し心にくるものがある。

ふと、一つ不思議に思うことがあった。

『…あの写真の人も賞取ってないんだ。』

あの、“夏の残響”を撮ったあの人。
他の人が選ばれないのはまだしも、あの写真を撮れる人でも賞が取れないのか。

じわじわと高校写真部界の厳しさを実感する。

『はー！不安だ…。』

ぼふんとベットに仰向けになると、天井には青々とした田園と、果てしなく広がる青空を写した一枚の写真が貼ってある。

『…あんな写真が、撮れたらな。』

この写真は、私のお父さんが高校生の時に撮った作品だ。

初め、父親の作品とは知らず、お父さんの書斎で見たこの作品に一目惚れした私は、お父さんに頼み込んで譲ってもらい、毎朝目につくように天井に貼った。(後々お父さんの作だと知らされた時は恥ずかしさで死ぬかと思った。)

構図も、色味も、選んだ風景も全てが完璧で美しいこの作品は、書斎で見たあの日から私の憧れだ。

この作品と出会った小学生の頃は、大きくなれば私にもこんな作品が撮れる物だと思っていた。
でも、そんな夢を見続けて7年。この時のお父さんと同い年になった今でも、この作品は憧れのままだ。
明日カメラを持って同じモチーフを撮りに行ったとしても、こんな作品はきっと撮れない。

私の写真は、未だに“写真”の域を抜け出せないのだ。

…そんなことをぐるぐると考えて。

嫌気がさしてもう一度「はぁ、」とため息をつく。

心を落ち着かせようと目を閉じれば、そのままうとうとと眠りについてしまった。