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クラス内はまだ慣れていないからか比較的静かで、それでも所々「よろしくね」だとか「インスタやってる？」だとか言う新学期恒例の会話がちらほらと聞こえてきた。
私の席は、窓際の前から2番目。
欲を言えば一番後ろが良かったけれど、外の様子が見える窓際の席は私にとって最高のものだった。
「…ね、ここの席の子？」
机の上にリュックを置いて席に着くと、隣に座っている女子がそう声をかけてきた。
『あー、うん。そうだよ。』
「私、福島ゆかり。よろしくね。」
『元倉Aです。こちらこそよろしく。』
…フレンドリーな子だな。
サラサラのストレートヘアを揺らしながら微笑む福島さんは、いかにもキラキラの女子高生で、「ね、LINE交換しない？」と差し出されたスマホにはピンク色の何かスノードームみたいな構造をしたカバーが付いていた。
それに引き換え『うん、しようしよう』と取り出した私のスマホは旧機種、百均で売っている手帳型の地味なケースで、女子高生と“自称”女子高生の差をありありと見せられたような気がした。
「ありがと〜！…え！アイコンの写真めっちゃ綺麗！自分で撮ったの？」
『まぁ、うん。』
「えー！やば！写真撮るの上手すぎ！」
『あはは、ありがとう。中学写真部だったから。』
「え、まじ？だからかぁ〜。」
「はい、席ついて〜」
ガラッ、とドアが開いて、出席簿を片手に先生が入ってくる。ざわついていた教室はだんだんと静まり、席を離れていた生徒は自分の席へと戻っていった。
福島さんも手に持っていたスマホをしまい、「じゃ、」と一言言って私の方に向いていた身体を自分の席へと戻した。
「全員いるな？…よし。今日からこのクラスの担任を勤めます、飯田修二と言います。高校生活、大変なことも多いと思うけど、楽しいクラスにしましょう！よろしく！」
にかっ！と笑って飯田先生はそう簡単に自己紹介をする。明るく、力強い先生は、まさしく“熱血教師”といった感じだった。
体育祭大変そうだな、と少し的外れのようなことを思う。
周りのクラスメイトもそう思っているからかどうかはわからないが、飯田先生の「よろしく」に、ちらほらと会釈をする人はいれど返事をする生徒はいなかった。
威勢よく発した「よろしく！」の反応が悪かったからか、少し居心地悪そうに飯田先生は業務連絡を始めた。
「…えー、今日は入学式とあとは今後の連絡のみで解散。連絡とは言ってもプリント配布のみだから、各自家庭で目を通すように…。」
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作者名：せるふぃ | 作成日時：2021年1月23日 11時
