13 ページ14
『最近そればっか言ってるよね』
「だってさぁ…。毎日会えてるのは嬉しいけど、彼女いられたら凹むし…」
一ノ瀬さんは私や澤田先輩の写真を見たくて写真部に来ている、というのもあるのだが、それよりもなによりも澤田先輩に会うために毎日写真部へと足を運んでいるそうだ。
私が帰ってきて、澤田先輩が入れ替わりで写真を撮りに行ったあと、こうして一ノ瀬さんの恋愛相談を聞くまでが、私の部活動のルーティンとなっている。
『まぁでも、毎日こうやって部活来れてるってことはいないんじゃない？先輩まじで皆勤じゃん』
「そう……なのかなぁ…」
『そうそう』
さっきも一緒に勉強かなんかしてたんでしょ？と聞けば、ぱっと顔を明るくして、
「そうなの！澤田先輩ほんと教え方上手くて〜！」
にこにこと嬉しそうに話す表情は、まさに恋する乙女の顔だ。
数学の教え方が優しい、だとか、音読するのが上手いだとか楽しそうに話す一ノ瀬さんを見ていると、私のささやかな心配が杞憂のように思えてくる。
『…澤田先輩、頭良さそうだもんね。』
「うん！学年一桁台らしいよ！かっこいいよねぇ…」
うきうきとした一ノ瀬さんの話を聞いていると、先輩が撮影から戻ってきた。
「！おかえりなさい！」
『おかえりなさーい』
「ただいま。八重桜、綺麗だったよ」
『それはなによりです』
「先輩、撮ったやつ見せてください！」
「おう。」
綺麗！とか陸部が走り込みをしてて…と隣に座って話す一ノ瀬さんと先輩を見て、微笑ましさと共にほんの少し邪魔者感を覚え、そっと帰り支度を始めた。
『じゃあ、お先失礼します。』
「あれ、Aちゃん帰っちゃうの？」
『うん。帰り寄りたいとこあって。』
「そっか、じゃあね〜」
「また明日」
『はい、また明日。』
ぺこりと会釈をして部室を出る。
窓の外は、もう真っ赤な夕焼け色に染まっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せるふぃ | 作成日時：2021年1月23日 11時
