【QK】夏の残響に耳を澄まして【学パロ】 (ページ12)

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……そんなこんなで。
私は写真部へと入部した。

二週間の部活動見学を経て入ったこの部活は、噂通りほとんど活動がなく、部長によれば部員が揃うのはこの新入生入部時と、展示会の行われる文化祭の時のみ。しかもその時でさえ来ない先輩もいるそうだ。

実際本格的に部活動が始まっても、毎日来ているのは写真が趣味だという二年生で部長の澤田先輩と、1-Dの一ノ瀬さんくらい。
部員17人のうち二人しか来ていないこの部活で、私は細々と撮影活動を始めた。

『…先輩、“夏の残響”っていう作品、誰が撮ったかご存知ですか？』

仮入部の時、部長として説明をしていた澤田先輩に、そう聞いたことがある。
タイトルではわからなかったらしく首を傾げた澤田先輩に文化祭の時に撮ったその写真を見せると、

「…あー！これか！これは…、河村じゃないかな？」

『カワムラ先輩？』

「そう。この写真珍しかったからよく覚えてるなぁ…」

『カワムラ先輩って今日いらっしゃいますか？』

「今日はいないな。てかあいつ幽霊だから」

『えっ』

その時と私の驚きったらまぁ無かった。

幽霊？？

あの写真を撮ったカワムラ先輩が？？

『ゆ、幽霊って、どういう…』

「あ、そうか。中学じゃあんま言わないもんな。幽霊部員ってのは、全然部活に来ない人のことで…。」

いえそういうことではなく。

『えっカワムラ先輩が、幽霊部員…？』

「うん。…というかなんでそんなに河村に興味あるの？」

苦笑いを浮かべて澤田先輩はそう問いかける。「いえなんとなく」と一言告げれば、興味もなさそうにふぅん、と言って首を傾げていた。

過疎状態の写真部、やる気のない部員、そして、その一人である夏の残響の撮影者…。

この学校に来てからの部活関係のあれこれはそれはとめどない衝撃続きで。
それに、ちらほらと明かされるカワムラ先輩の実体にも戸惑うばかりだ。

はぁ、とカメラを片手にため息をつく。
とうとうカワムラ先輩に会えないまま、本入部から一ヶ月が経過した。

５月。

この季節は、春から夏へと植物たちが移り変わる時期だ。
校門前に咲いていた桜は葉桜へと、遅咲きの八重桜は満開を迎え、春の終わりを柔らかく伝えている。

放課後、部員もいない部室にいる理由もなく、一人カメラと一緒に外に出て、こうしてだらだらと撮るのが私のルーティンと化していた。