46話「兄と弟」 ページ2
西蔭啓也。
確かに、過去の自分はそう呼ばれていた。
それを今、思い出した──否、ずっと「無かったもの」と思い込んでいた。
「……フ、フハ、フハハハハ！！そうだとも！俺はお前と同じ親から生まれ落ちた男よ！」
数年ぶりに自分の本名を耳にし、突然狂ったように高笑いをする琴平。その口調はいつもと違っていた。
「確かに"俺"はお前の兄"だった"……だが！」
自身の胸に手を当て、いつもの冷笑を浮かべる。再度二人を眺めにやってきた突風が、弟とよく似た性質を持つ彼の髪をなびかせた。
「──今の"わし"は違う」
血縁者であることは認めた。しかし兄弟の仲を頑なに認めようとしない。
西蔭の肩は小刻みに震えていた。
「良いか。今やわしとお前は赤の他人じゃ」
「いい訳がないだろ！！」
突然大声を張り上げた西蔭。
「俺がどれほど兄さんを待っていたか……」
今度は力なく言葉を紡ぐ。しかしそれでも琴平の表情は依然として冷たい。
「戯言を抜かすでないわ。潔く諦めよ、こちらはお前との仲を修復しようなぞ毛頭も思っとらんぞ？」
極め付けには空虚な笑顔で、
「ま、『同じチームメイト』としては仲良くしようではないか」
と付け足し、その場を後にしようとした。
「事実から逃げ続けるのか」
突然、西蔭の口から冷淡に言い放たれた言葉は、琴平を思わず立ち止まらせた。
「まぁ、ひとまずはそれでいい。兄さんがそうしたいならな。ただ……これだけは覚えておいてくれ」
西蔭は、一瞬たじろいだ琴平にそっと近づく。そして自分より若干低い位置にある彼の耳元で──
「俺たちは実の兄弟だ。同じ親から生まれた以上、この縁を切ることはできないぞ」
兄に対する強い執着心を垣間見せた。
「ふん、聞き分けの悪さは昔から直っとらんな」
琴平は強気に言ってみせる。
すれ違った人の顔を悪戯っぽい表情で見やる癖が昔から変わらないと言われたが、お前も大概変わっていない──とばかりに。
琴平は西蔭を一瞥すると、踵を返して自室へと向かおうとする。
その時、西蔭は確かに聞いた。
「俺にはもう西蔭を名乗る資格はないんだよ」
通り過ぎる直前にこぼした彼の一言を。
西蔭は急いで振り向くも、そこにあったはずの彼の姿はすでに消えていた。
自室に戻った琴平はひどく狼狽していた。
──同じ親から生まれた以上、この縁を切ることはできないぞ。
絶対に切ることのできない縁は、彼の心を徐々に乱していく。
「血が繋がっとるじゃと……？わしの家族は生涯にただ一人、師匠だけじゃ……！」
琴平は彼と同じ血が流れる自身の身体を恨めしく思った。
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いづう(プロフ) - ニーナさん» おわ〜〜〜ニーナちゃんだ〜〜！！読んでくれて感謝感激……。最初はこんなもんだけどだんだん性格の悪さが露呈してくるよ(笑) 坂野上可愛がってるのはある意味では伏線なんですよね……。 (2021年1月3日 22時) (
レス) id: d4f89da318 (このIDを非表示/違反報告)
ニーナ(プロフ) - こんにちは！いづうちゃんニーナだよ！ようやくここまで読めました。琴平さん良い性格してますね(^-^)人の不幸が好きという決して良いとは言えない性格だけど、積極的に人を傷つけないところとか坂野上君可愛がってるとことか良いですね…。 (2020年12月30日 11時) (レス) id: 48e524db4d (このIDを非表示/違反報告)
白銀の執行人(プロフ) - ぜひぜひ(*´∇`)ﾉ面白いですよ！オススメします！ (2018年11月13日 20時) (レス) id: 43da32bf0c (このIDを非表示/違反報告)
いづう(プロフ) - 白銀の執行人さん» いいですよね〜(*´∀｀*)ジョジョに関しては結構前に父の影響でちらっと触れてたんですよ〜。前と比べて成長したことだし、機会があればじっくり読みたいです！ (2018年11月13日 20時) (レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)
白銀の執行人(プロフ) - やっぱり！ジョジョ好きなのですぐに分かりました！イナイレとジョジョ良いですよね！ (2018年11月13日 19時) (レス) id: 43da32bf0c (このIDを非表示/違反報告)
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