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S._30 ページ30

かちゃかちゃ…と意識の遠くで何かいじる音が聞こえる。
真っ暗の中に1つ赤いライト。



懸命に追いかけてたどり着いた時分かる。
赤のライトではなく、紅の液体。
ぼんやりしていてよく見えないが中心にいるのは確かに彼だった。
彼の頭部だった。



引きちぎられた紅。
真っ直ぐこっちを見て、あたしに何を伝えようとしているの。



声を上げようとした瞬間
あたしは黒に呑み込まれた。



「だいき、?」



寝息がない。
いつかと似た状況。



寝ぼけた脳を叩き起して辺りを明るくすると、いつも通りにかかっている白く赤いパーカー。
トイレだろうか。
いやトイレの電気がついていない。



マンションの狭い一室では、移動する場所がそんなにない。



だとしたらあの夢の中のかちゃかちゃという音。
あれは。



「だいき…!」



玄関の明かりをつける。
あたしよりちょっとサイズの大きい黒の靴は、どこにも置かれていなかった。
チェーンが外され鍵も開いている。



何も考えず飛び出していた。
前のようにぐったりして壁にもたれかかっているわけでもなく、今度は本当に居なかった。



夜なら逃げれるってもんじゃない。



外を見回してみても深夜3時の景色は街灯が当たる場所しか見えない。
焦る思いだけが、足を突き動かす。



「…あっ」



エレベーター前。
よく知る背中が、呑気に携帯をいじっていた。

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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734  
作成日時:2019年8月1日 19時

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