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S._29 ページ29

家のソファーを見た瞬間に溜めていた何かが抜け落ちた。
帰ってくるまでずっと視界にあった車が見えなくなって。



鍵とカーテンをしっかり閉めれば何となく事実を見ないで済むような気がした。
いっそ、隔離されたかった。



まだ1日しか経っていないのにこのしんどさ。
監視されるのはこんなにも息苦しいんだ。
今ならストーカー被害に会っている人の気持ちが少しだけ分かりそう。



『おかえり』


「ただいま…」



クッションに顔をうずめて大毅の声を聞く。
おかしなことに何だかそれに安心する自分がいた。
染まってるんだと、怖くなる。



『疲れたん?』


「んー…警察がねぇ、邪魔だなぁって…」


『消す?』


「それはダメ」


『そっかぁ…でもAが嫌な奴は消したいな…』



隣に震動が来る。
ゆっくりあたしの背中に腕を伸ばした大毅はそのままポンポンと優しく叩いてくれた。
人を想う気持ちはまだないにしても、あたしを労わってくれる気持ちは出てきたらしい。



サイコパスから普通の人間の感覚に戻れるのかは知らないが、もしかしたら普通の感覚も分かるようにはなるかも。



あたしがいることによって改善されていくのなら、そばに居るほか選択肢はない。



「今日は外出てない?」


『出てへんよ』


「そっか」


『けどもう、バレてるやろ?』



リズムの揃った背中の手が眠気を誘う。
その手をそっととってあたしの手と繋いだ。
眠気を振り払い、大毅を見る。



「大丈夫。大毅はここに居てね」



もう1人にはさせないよう。
寂しい思いは、させないよう。

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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734  
作成日時:2019年8月1日 19時

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