S._2 ページ2
ザッザッと少しスるように歩いてくる。
無駄だとは分かっていても息を殺した。
目を瞑った。
外の世界を遮断し、心だけは逃げられるよう。
まぁ、そんな抵抗も虚しく散る。
『…自分、見たん』
低い声。
やっぱり男。
どうせ何を言っても殺されるのだと素直に首を縦に振る。
見えない相手がしゃがむ気配がした。
『顔上げてこっち見ろ。いきなり殺さんから』
いきなり…ってことは。
溜息も出ない。
喉がひりついて泣きそうになってくる。
ゆっくり、瞼を開けた。
思い描いていた顔と180度違う。
イケメンと言われる部類に入る顔。
白い薄いパーカーのフードを被っているが…
その白は赤に濡れていた。
『…A、か…?』
「えっ」
何で。
あたしの名前…
『向こうの公園で…アイス、半分こした』
走馬灯のように駆け巡る記憶の1ページが開かれる。
隣で笑っていたあの子。
無邪気に笑いかけてくれた…
「大毅…?」
『おう。大毅』
ニッと笑った。
その笑顔で確信した。
この人はあの子なんだと。
けど…こんな笑顔を持つ人がなぜ。
テラテラと光るナイフを持っているのだろう。
いちごを潰したような赤。
ぐしゃり。
その感覚は、想像したくもない。
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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734
作成日時:2019年8月1日 19時