Rain

S._7 ページ7

これは夢なんだと分かる夢を見る時がある。
主に、怖い夢。
嫌な夢。



他人に言えば笑われそうだが、そういう時あたしは夢の中で1度目を閉じる。
そして現実世界の自分の瞼が開くように思いきり力を込めて目を見開くのだ。



追われながら逃げながら必死に目を開いた。
笑う殺人鬼。
赤く染まるそれをチラつかせ無限に追いかけてくる。



夢だと分かっているのになぜか死なないという考えは持てない。
夢の不思議なところ。



｢…っは、｣



目が覚めると、重かった。
体の上にはあたしが着ていたパーカーがかけられているけど…
その上にもまだ乗っかっている。



そしてあたしは同時に、首の一部分だけが冷たい感触を覚えた。



『起きたん、残念』


｢大毅…？｣


『綺麗やったのに』


｢何してんの…っ、殺さないって！｣


『殺さへんよ笑 白い首筋にこれ、合うなぁと思って』



んふ、と笑って静かに上から退く。
暗闇に慣れて大毅がどんな顔をしているのか徐々に見えてくる。
楽しそうだ。



もしくは
犬や猫でも見るような目をしていた。



あたしはやはり、安全ではないのかもしれない。



『なぁ、寒いから一緒に寝よ』



腕を引っ張られドサッと布団に倒される。
ナイフをさも大事そうに枕の隣に置いてまた笑った。



『ありがとうなぁ、置いてくれて』


｢うん…｣


『おやすみ』


｢お、やすみ｣



寝れるわけがない。
明日、陽を見れなくなるかもしれないのに。



悪い想像ばかり頭に浮かべ、瞼を閉じられなかった。

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