CROWN No.157 ページ7
‥
相田「……隼様、A様」
私達の視線は、玉の落ちた場所1点しか見ていなかった。
椅子を後ろに倒して、盤の端を思わず掴んで。
ふたりして、同じ動きをして。
その様子を、相田さんは後ろから見ていたらしい。
にわかに雑音がフェードアウトした感じがした。
いや別に、客観的に見たらそんな大事ではないのだけど。
『CROWN』と呼ばれた気がして顔を上げると、ディーラーが私の背中の向こう側を手の平で指していた。
少し遠くに、相田さんの姿が見えた。
相田「賭けごとをしていらしたのですか」
隼「金はかけてないよ」
相田「何かは賭けていらしたんですね」
A「……」
相田「A様」
A「はい」
相田「どちらが勝たれたのですか」
A「……」
勝ったのは……
運がよかったのは……
隼「Aちゃんだよ」
A「……」
隼の賭けた場所に落ちなくてよかった。
でも、自分が勝ちたいと思ったわけじゃない。
"彼ら" のことを知りたいと自覚したばかりなのに。
相田「賭けたものは……」
A「……」
相田「……複雑なもののようですね」
隼「Aちゃんはやっぱ運がいいね！」
自分の過去…… "笑顔の理由" を私は知る権利を得た。
自分の知られたくないもののはずなのに、どうして貴方はそんなにへらへらしてるの……することができるの？
相田さんは、隼をじっと見ている。
隼は『片づけ片づけー』と、チップや飲み物をどけ始めた。
ふたりとも……眉の形が悲しんでいる。
A「思い出を賭けました」
相田「……」
A「監獄の中で、誰もが1番ひけらかしたくない部分です」
隼「……」
A「でも、私は……不覚にも……」
相田「……はい」
A「こんなの……我儘だ……」
隼「俺は知りたいよ」
視界が波打った。
その先には、おぼろげに隼が見える。
肩に手を置かれ、何かと思った途端、
A「？！」
目に溜まっていた、視界を波打たせていたものは流れ落ちた。
クリアになった水晶に映ったのは、いつになく真剣な隼の表情。
隼「俺、真面目だから」
そのまま、呆気にとられる私を放って。
隼はそそくさと、優雅に堂々と、カジノフロアを出て行った。
相田「……A様、お顔が引きつっておられますが」
──A様に、感情の表れが……
‥
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1071人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もも - 面白いです！更新お願いします！ (2021年1月24日 23時) (
レス) id: 0e215cea34 (このIDを非表示/違反報告)
iro(プロフ) - コメント初めてさせてもらったので言葉とか変だったらすみません。また何回も読み返してゆっくり更新待っているので頑張ってください!! (2020年12月29日 2時) (レス) id: c0e332dce1 (このIDを非表示/違反報告)
iro(プロフ) - 4回くらい読み返させてもらってます!!何回読んでも最高で、最後まで読んでは続きがはやく読みたいーって1人で騒いでますwゆっくりでいいですが、できたらはやく続き読みたいです(言ってること矛盾しててすみません)あとオチは佐野玲於だと嬉しいです。 (2020年12月29日 2時) (レス) id: c0e332dce1 (このIDを非表示/違反報告)
かな - ゆっくりでいいので更新待ってます！亜嵐くん落ち希望です！ (2020年10月26日 18時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 隼くん落ち期待しています！！ (2020年10月21日 21時) (レス) id: 1c9bc00d48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kyoh.
| 作成日時：2019年1月24日 4時
