【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 4

CROWN No.169 ページ19

‥




緊張している。
それはAの口から出た、初めての "感情" を表す言葉。
へえ、そう言うことを言うようになったんだ。
そんな、ひとり感心している自分がいる。



ふっと暗くなる会場。
全ての照明が落とされたために、1点の光も見えない。
だから今まで勢いのあった会場は、次の展開が予測できないで黙ってしまっている。



ふふ、楽しい。
予測不可能な、華麗で摩訶不思議な演出をする。
それこそが "BIG CITY RODEO" の醍醐味。
司会さえ次の演目を案内しないので、今ここには動く者は誰ひとりとしていない。



さあ、出番だよ "CROWN" 。









──花びらの、ように散りゆく中で

　 夢みたいに、君に出逢えた奇跡……









ステージに立って、頭上から落とされたひと筋の光。
それによって王冠は輝いて、今宵の主役であることを再誇示する。



ステージに上がった彼女は、さっきまでの様子と打って変わって、これ以上ないくらい堂々としてる。
そして、とても綺麗だ。



黒のラインが丁寧に入ったシルク色。
ウエディングのようでそれを匂わせない、すごくいいデザイン。
どうして彼女は、このステージでこんなにも光り輝けるのだろう。
ああそうか、彼女はまだ……無知で、純粋だから。



黒と金、それから赤で彩られたこのステージはひどく鮮やかで。
そのステージは、 "俺ら" をより際立たせるためにあるのだけど。
だけど、今はちょっと静かにして。
主役より、目立たせたい者が、今夜はいるんだ。



ほら、誰もが注目している。
今までになかった演出だ。
おかしいよね、ここまで "装飾" を見せびらかしたいだなんて……
今まで、思ったことがないから。









「……ふふっ……」









思わず、舌で口の端を拭った。




‥

CROWN No.170→←CROWN No.168

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す