CROWN No.141 ページ41
‥
しばらく、と言うか、ほんの少しの間だけしか休んでいなかったはずなのに。
この3〜4日間が、どんなに長かったかを思い知らされる。
目の前のこの "BIG CITY RODEO" が、裏口であれ立ちはだかるように私を見下ろしているような気がする。
夜の街に生きる人間の誰もが羨む場所。
それが "BIG CITY RODEO" 。
そんな気がした。
私はメンディーに軽く会釈をした後、私は相田さんに顔を向ける。
彼はまるで、『困ったお嬢様ですね』と言っているようで。
でも、『お帰りなさい』とも言ってくれているようだった。
真偽は知るはずないけど、また彼は笑ったから。
だから、私は、『ごめんなさい』と『ありがとう』を織り交ぜた、まだ "彼ら" が知らないはずの笑顔を、相田さんに投げた。
グレーの地下道。
これはそのまま従業員と "彼ら" 、そして "CROWN" の控室まで繋がっているのだけど、それだけのためにこんな豪勢な通りを作るのだろうか。
両脇では女性達のシルエットが妖艶に踊っていて、私の見たことのない動きをする。
いや、ここに来た数日の間は毎夜見ていたのだけど。
相田「ゆっくり、お選びくださいませ」
相田さんは、いつもの通りに私に呼びかける。
私は無言で、小さな会釈をした。
今日はシンプルなワンピースに、踵高めのヒール。
髪型は変わらず、編み込みのハーフアップ。
腕輪と、人差し指にリングもつけた。
相変わらず、左耳には王冠のピアスが揺れている。
相田さんにメイクをしてもらって、完成。
手を引かれ、会場へ向かう。
それはまるで、誰かに、深い森へ誘われるよう。
A「……」
扉の前で、私は思わず相田さんの手を引っ張った。
目の前にある、 "VIP" の文字。
奥には、きっともう支度を終えた "彼ら" がいる。
そのことだけに、極度の緊張を覚える。
フィーリングは嫌悪でしかないのだけど、初日と今日では全然違う。
何でだろう……私は、何か悪いことでもしたのだろうか。
私を闇に閉じ込めて、憔悴させたのは "彼ら" 。
でも、逃げたのは "私" 。
ああ、もう気持ちが分かんないや。
そんな私の気持ちを無視して、相田さんは扉を叩いた。
『大丈夫ですよ』と笑っているかのようだったけど、私は正直、顔が青ざめていたと思う。
そして、私の気持ちを無視した奴がまたひとり。
コンコンと響いた音の直後、扉が勢いよく開いて、ひとり私に飛びついてきた奴。
‥
1449人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シェリル(プロフ) - 最初から一気に読ませていただきました。小説に引き込まれ、楽しくドキドキしながら読ませていただき、素晴らしい小説に出会えました!書くのは大変だと思いますが、京羽さんの小説の虜になってしまったので、これからも応援しています!オチは片寄くん希望です。 (2018年12月23日 18時) (レス) id: 04471f650b (このIDを非表示/違反報告)
さぁや(プロフ) - お話の構成や、人物の様々な表情が細かに書かれており読みごたえがありました。片寄くん希望です。 (2018年10月25日 17時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
たちばな(プロフ) - 京羽さんの言葉のセンスやとても凝っているお話の構成が大好きです。読むたび次話が楽しみでなりません。これからも楽しみにしています! オチは玲於くん希望です (2018年10月23日 22時) (レス) id: 37da8e3cba (このIDを非表示/違反報告)
殺し愛(プロフ) - BIC CITY RODEOからこの世界観を作り出すなんて凄いです!GENEのメンバーも現実設定の様で違う様な…独特の設定で面白いです。最後に、オチは隼君が良いです! (2018年10月22日 17時) (レス) id: ee020fb2bb (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します!京羽さんの語彙力わたしに分けてほしいです、、笑 オチは亜嵐ちゃん希望です!かつこいい亜嵐ちゃん期待してます!!! (2018年10月22日 6時) (レス) id: bc935dea58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Kyoh. | 作成日時:2018年1月26日 0時