CROWN No.128 ページ28
‥
嘘
私に憑いた嘘は私に嘘を吐かせる。
それはどこまでも深く、どこまでも酷く私を傷つける。
私の身体の奥深くまで侵食していって、絡みついてはがせない。
手当を受けながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
途中湿布のひんやりとした感覚が二の腕を包んで、意識が現実に戻る。
できることなら、幸せだったあの頃に戻りたい。
手当てを終えて診察室を出れば、出口のほうから話し声が聞こえてきた。
お姉ちゃんと "CROWN" だ。
私を目の敵にしていたあの囚人の話をしていた。
パーテーションをどければ、ふたりと目が合う。
お姉ちゃんが執拗に『説明しろ』と言ってくる。
"CROWN" も表情は崩さないけど、きっとそれは崩さないんじゃなくて崩せない。
私を憐れむような、心配しているような、そんな目。
うるさい。私の……私達の思い通りに行けばよかった。
生きるのに、私達の道を作るのに、必死なだけだった。
夏恋「刑務官と話してたの見られただけ」
私のこの性格……性質を理解しているのか、お姉ちゃんは私の "言葉" をスルーする。
解ってる……嘘がよくないことなんて。
夏恋「ここではね、嫌われる奴は徹底的に潰されるの。
あんたみたいな "彼ら" のお気に入りでない限り」
この言葉は、この牢獄の中に留まることじゃない。
だから、私とお姉ちゃんは必死で生きてきた。
ふた言目は、流石にただの嫌味だったけど。
"CROWN" は、一瞬驚いた目をした。
でもその後……ひどく哀しい顔をした。
何よ……気になるじゃない、そんな顔されたら。
夏恋「……」
萩花「夏恋、説明しな」
A「いいよ。
人には誰にでも言いたくないことがあるから」
萩花「この子の場合はそれが多すぎる」
嘘憑きが私に取り憑いた。
それはもう、何年も前のことだ。
あの日はどんな日だったっけ？
もう今では覚えてないなあ。
私の喉奥深くから紡ぎ出される言葉はとっくに汚れて。
それは自分達が生きるためだけに、澱んで霞んでいった。
周りに溶け込むために、何気なく、他の子と同じように生活しているように見せかけるために。
自分とお姉ちゃんのために、自ら "嘘憑き" と契約をした。
A「力を抜いて。私はちゃんと見てる。聴いてる」
医務室を出ていこうとしていたのに。
一瞬視界がブレたと思ったら、私は彼女の腕の中にいた。
‥
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シェリル(プロフ) - 最初から一気に読ませていただきました。小説に引き込まれ、楽しくドキドキしながら読ませていただき、素晴らしい小説に出会えました！書くのは大変だと思いますが、京羽さんの小説の虜になってしまったので、これからも応援しています！オチは片寄くん希望です。 (2018年12月23日 18時) (
レス) id: 04471f650b (このIDを非表示/違反報告)
さぁや(プロフ) - お話の構成や、人物の様々な表情が細かに書かれており読みごたえがありました。片寄くん希望です。 (2018年10月25日 17時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
たちばな(プロフ) - 京羽さんの言葉のセンスやとても凝っているお話の構成が大好きです。読むたび次話が楽しみでなりません。これからも楽しみにしています！ オチは玲於くん希望です (2018年10月23日 22時) (レス) id: 37da8e3cba (このIDを非表示/違反報告)
殺し愛(プロフ) - BIC CITY RODEOからこの世界観を作り出すなんて凄いです！GENEのメンバーも現実設定の様で違う様な…独特の設定で面白いです。最後に、オチは隼君が良いです！ (2018年10月22日 17時) (レス) id: ee020fb2bb (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します！京羽さんの語彙力わたしに分けてほしいです、、笑 オチは亜嵐ちゃん希望です！かつこいい亜嵐ちゃん期待してます！！！ (2018年10月22日 6時) (レス) id: bc935dea58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kyoh.
| 作成日時：2018年1月26日 0時
