検索窓
今日:3 hit、昨日:27 hit、合計:446,473 hit

CROWN No.101 ページ1






「お前みたいな無表情女でも、泣く時なんてあんだな」


A「……」









声がした。
どうして、私がここにいると判ったのだろう。
振り返って見上げると、ポケットに手を突っ込んで私を見下ろす彼の姿。



白雪のようなラメの入った黒のジャケット。
中は真っ赤なシャツと、シルバーの細いアクセサリーが絡まったデザインの黒ネクタイ。
極めつけは……左耳で風に揺れる、十字架のイヤリング。



何で、ここに……玲於が。









A「何、で」


玲於「走っていくのが見えたから」









『特に理由はない』。
玲於はそう言って、後頭部を掻いた。



私は、視線を正面に戻した。
ずっと180度体を(ねじ)ったままはきつい。
何より、今は玲於を見ることができない。



何だか、変だ。
今日は、情緒が不安定な日なのかもしれない。
その理由についても、いまいちちゃんと理解していない。
いや、したくないのかもしれない。









玲於「っしょ、と」


A「え」









体操座りをして、上に組んだ腕の中に顔を埋めていると。
隣でジャリッと音が鳴った。
顔を上げると、玲於が隣に座っていた。
手を後ろについて、足を前に投げ出して、ぶらんぶらんと揺らす。
もし靴が落ちれば、その靴は海の藻屑となるだろう。
ちょっと、ひやっとした。



驚きと困惑でしばらく玲於を見ていたけど、彼は何も言わないで、ただ目の前に広がる海を眺めていた。
視線が横に少し動くから、海の端から端までをゆっくり見て堪能しているんだと思う。
どうして。
目の前の海はただの黒い水。
そんな表情で、見るものじゃないのに。









玲於「俺さ、海好きなんだよね」


A「……何、いきなり」









そのそよ風に揺れる横顔をまだ見ていると、唐突に話し出した玲於。
何となく慌てて、目尻で冷たい涙の跡を手首で拭う。









玲於「……今まで、海見たことなくて。俺」


A「……そうなの」


玲於「でも、ここに来てから。
  "GENERATIONS" になってからは、毎日好きなだけ海を見れるようになった。
 たとえ夜しか見れなくても、俺にとっては新鮮なものに変わりはなくてしょうがないんだよね」


A「……そう」









何で、いきなりそんな話をするの。
こんな気持ちで、今貴方の話は聞ける自信がない。




CROWN No.102→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (540 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1448人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シェリル(プロフ) - 最初から一気に読ませていただきました。小説に引き込まれ、楽しくドキドキしながら読ませていただき、素晴らしい小説に出会えました!書くのは大変だと思いますが、京羽さんの小説の虜になってしまったので、これからも応援しています!オチは片寄くん希望です。 (2018年12月23日 18時) (レス) id: 04471f650b (このIDを非表示/違反報告)
さぁや(プロフ) - お話の構成や、人物の様々な表情が細かに書かれており読みごたえがありました。片寄くん希望です。 (2018年10月25日 17時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
たちばな(プロフ) - 京羽さんの言葉のセンスやとても凝っているお話の構成が大好きです。読むたび次話が楽しみでなりません。これからも楽しみにしています! オチは玲於くん希望です (2018年10月23日 22時) (レス) id: 37da8e3cba (このIDを非表示/違反報告)
殺し愛(プロフ) - BIC CITY RODEOからこの世界観を作り出すなんて凄いです!GENEのメンバーも現実設定の様で違う様な…独特の設定で面白いです。最後に、オチは隼君が良いです! (2018年10月22日 17時) (レス) id: ee020fb2bb (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します!京羽さんの語彙力わたしに分けてほしいです、、笑 オチは亜嵐ちゃん希望です!かつこいい亜嵐ちゃん期待してます!!! (2018年10月22日 6時) (レス) id: bc935dea58 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Kyoh. | 作成日時:2018年1月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。