【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 2

CROWN No.53 ページ3

‥




外は、雨だった。
濡れながら光る建物の明かりや店のネオンは、ここが私の知らない街のように思わせる。
弱くはないけど、豪雨と言うほどではない。
車の中からじゃ、雨の澄んだ音は聞こえない。



会場に着くまで、涼太はひと言も話さなかった。
車内にはずっと、 "BIG CITY RODEO" とは違う曲が小さく流れていた。
"BIG CITY RODEO" と似たようなアップテンポ。
きっと、これも彼ら "GENERATIONS" の曲なんだろう。声が一緒だ。



正面に、人だかりが見えてきた。
その頃にはもう雨は止んでいて、街灯が眩しかった。
私達の車に気づいたのか、彼女達は脇に避けながらも歓声をより一層高めた。
この車が "彼ら" のものであると、知っているんだろう。









涼太「よし、着いた」


A「あの」


涼太「何？」


A「私……遊びに来てるつもりはないから」


涼太「……」









きっぱり言うと、涼太は無言の笑みを浮かべたまま私の顔を見た。
私も、負けじと睨む。
興味ないから、遊びようも踊りようもない。
ただ、 "CROWN" と言う立場を蹴ってまで囚人達のつまらないいじめに遭う気はない。
私にとっては、その程度のことなんだ。









涼太「楽しみだね」


A「は？」


涼太「降りて。皆待ってる」









シートベルトを外して、彼は無理やり私を濡れたアスファルトに降ろした。
正面入口の前には、他に6台の車。
皆、もう着いている。
ドアを閉めて皆の元に向かおうとすれば、窓のノックの音に呼び止められた。
運転席側に回って、窓の向こうにいる涼太と顔を向かい合わすと、









涼太「 "BIG CITY RODEO" は、ひとり残らず狂う場所。
　だから、 "CROWN" になった以上は楽しまないと」


A「だから、私は」


涼太「俺がさせてやるよ。楽しいと、思わせてあげる。
　象徴なんだよ、 "CROWN" は。
　象徴が楽しんでないって、おかしいと思わない？」


A「……」


涼太「目を逸らさないで。全部、奪うから」









窓を下げながらそう言って、彼はウインクと共に"口笛"を吹いた。
今宵も、 "BIG CITY RODEO" が開かれる。
その合図だ。




‥

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