【九条天】なぜか天使に好かれました【アイナナ】 (ページ45)

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45：泣かないでページ45

(天side)

振り返ったらAがいなかった。
さっきまで死んだ魚みたいな顔で後ろをついてきていたのに。

「A？」

無理やりつれてきたのはボクだけど、嫌々でも外にだしてあげたかった。
あのまま家に一人にしておいたら、また元に戻ってしまう。

「迷子になるような子じゃないのに」

どこへ行ったんだろう。
まさか一人で帰ったとか？
Aのことだからありえない話じゃない。
そういう容赦ないところ結構好きだけど。

元来た通りを戻りながらAの姿を探す。
今日はどんな服を着てたっけ。
嫌々着替えてたからね。確か白いパーカーのワンピース。

「あ」

思い出した通りの服を着たAの後姿をみつけた。

「A」

駆け寄って声をかけると、彼女が振り返る。

「！」

振り返ったAの顔を見て、一瞬呼吸を忘れた。
だって、

「泣いてる」
「泣いて、ない」

強がりなAの目から涙がこぼれた。
泣いてるよね。
慌てて目元を拭う彼女を見て、口にするつもりはなかったのに言葉にしてしまった。

「ごめん、かわいいと思った」
「刺すよ」

泣きながら物騒なこと言わないで。
抱きしめてあげたかったけど、こんな公衆の面前でできるわけがない。

「勝手に消えないでよ」

それはボクのセリフなんだけど。
初めて会った時も、Aは泣いていた。

その泣き顔が一番好きだなんて、口が裂けても言えない。