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08:前途多難な二人 ページ9

「A先輩を助けないと!」
「え、この空気の中あそこに飛び込むの? 音っち勇気ある!」
「まじめに考えてください!」


ユウリと音葉がAを救出しようとしている中、Aは相変わらず静かに泣いていた。


「えっと、Aちゃん? ごめんね。天は君のこと待ってたんだよ。楽しみにしてたんだ」
「待ってない。楽しみにしてない」
「天!」


龍之介がAの背中をさすりながら諭すが、天は腕を組んでご機嫌な斜め、といった感じだった。


「いいだろ、いつ挨拶に来たって」


楽の言葉に天は呆れたようにため息を吐いた。


「来たって言える? 無理やり言わせたようなもんでしょ」
「だからって泣かせる必要があるか?」
「楽は女性に甘すぎる」
「はあ?」


二人が喧嘩になりかけたとき、ユウリが二人の間に割って入った。


「まあまあ、先輩方、今回のことは本当に申し訳なかったです! これもリーダーであるあたしの教育不足で!」
「キミがリーダーだったの?」
「いや、まだ決まってないんですけどこの空気だとあたししかいないかな〜と」
「じゃあ、キミもちゃんとして。馴れ馴れしい」
「おお、さすが九条先輩、厳しいですね!」


天が冷たく言い放ってもユウリは折れない。
音葉は隣で聞きながら、度胸のある人だ、と思った。もしくはただの馬鹿か。


「とりあえず今日はこのあたりで失礼します! A、おいでー!」


ユウリがAの名前を呼ぶと、彼女はやっと目元を拭ってとぼとぼと歩きだした。
背中をさすっていた龍之介は、心配そうに彼女を目で追う。

ぱたん、っと部屋の扉が閉まり、室内が静寂に包まれた。


「行ったな」

ため息をつく楽。


「大丈夫かな」

不安そうな龍之介。


「ほんとに最悪」

むすっとしたままの天は、しばらく機嫌が直りそうにない。

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作者名:兎田夏 | 作成日時:2016年12月20日 14時

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