【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？【九条天】 (ページ40)

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39：笑顔ページ40

「・・・ボクのことがこわいの？」

はっきりさせたかった。こわいならこわいといってほしかった。

「こわくないです」
「こわいんでしょ」
「こわくない、です」
「こわいっていって」

言い合いのようになってまた沈黙が訪れる。
Aはどうしたらいいかわからない、といった表情で、床を見つめていた。そんな顔をさせたいわけじゃない。

「ねえ、笑ってよ」

自然と口からでた。天はずっと忘れられなかった。公園で見せてくれたあの笑顔を。ステージの上で歌っていた星空みたいにキラキラしたAの瞳を。

「キミの笑顔が見たい」

まっすぐ伝えると、Aは何回も目をぱちぱちと瞬いた。急に笑えと言われてびっくりしたのだろうか。

「そ、そういわれても」

当然だ。笑えといわれたら余計笑いにくい。

柄にもなく変なことを言ってしまった、と天が後悔していると、Aが迷った感じで口を開いた。言ってもいいのか相当悩んでいる様子だった。

「今度、一緒に」

その声に天がAを見つめる。Aも初めて天をまっすぐ視界に入れた。

「ドーナツパーティしませんか」

急な誘いだったが、今まで天の中でもやもやしていたものがすーっと消えていくような気がした。

「する」

自分はいつからこんなに単純になってしまったんだろう、と天は思った。少し恥ずかしくなって髪を耳にかける。じっとしていられそうにない。

「楽しみにしています」

――あ。

天は、これだ、と思った。
Aはたぶん自分では気づいていないだろうけれど、ふわりと笑っている。

その笑顔を見て、一番の敵はドーナツかもしれない、と天はため息をついたのだった。