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38:変わっていくこと ページ39
「なに?」
沈黙を破ったのは天だった。Aはだいぶ緊張が解けたようで、もう震えてはいない。
「ドーナツ、ありがとうございました」
話すスピードが遅いように思っていたが、よく聞くと一つ一つの言葉を大切にしているような話し方に聞こえた。Aが口にすると、どんなささいなことでも重要なことに聞こえてくるから不思議だ。
「いえ、喜んでもらえたようでよかったです」
天が淡々と答える。
これ以上、Aに関わったらきっと自分はおかしくなってしまう。それがこわかった。
「あの、この前は、すみませんでした」
しかし、Aが先日のことを口にしたので、天は嫌でもあの日のことを思い出してしまった。少し距離が近づいたと思いこんで、手を伸ばしてしまったことを覚えている。その手が振り払われたことも。
「びっくりして、九条さんのこと、怒らせてしまって」
「怒ってない」
すかさず否定した。はたから見たら今もだいぶ怒っているように見えるだろう。
「そ、そうですよね」
Aは天の反応に、身を固めた。本当に怯えられている。
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作者名:兎田夏 | 作成日時:2016年12月20日 14時