32:天使の不調 ページ33
TRIGGERの楽屋では、楽と龍之介が顔を見合わせて困っていた。
というのも、彼らのセンターの様子がおかしいからである。
「最近天の様子がおかしくねぇか」
楽が天には聞こえないように小声で話す。それを聞いて、龍之介が目を見開いた。
「え? やっぱり? なにかあったのかなって思ってたんだ」
二人で同じ楽屋にいる天を見る。
彼はさっきからずっと楽屋のソファに座って動かない。
仕事は完璧にこなしている。元気がない、というわけでもない。
しかし、休憩時間や待ち時間、移動の時間になると、椅子に座ってぼーっとしたり、立ったかと思うとすぐに座りなおしたり、普段の彼とは明らかに様子が違った。今もソファに座ったまま十分ほど微動だにしていない。
楽と龍之介は静かにアイコンタクトをとった。
「天、どうした」
楽が天に近づいて声をかけると、天はゆっくり二人を見上げて口を開いた。
「なに?」
いつもの天だ、と二人は思う。反応はいつもこんな感じだ。特におかしいということもない。
「なにか悩みがあるなら聞くよ」
続けて龍之介が優しく声をかけると、天は少し視線をさ迷わせた。
「べつに。なにもないよ」
なにもないことないだろ、という言葉を楽と龍之介は飲み込んだ。
天は普段からなかなか自分のことを話そうとしない。
しかし、今回は天自身も自分に何が起こっているのかよくわかっていないようだった。
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作者名:兎田夏 | 作成日時:2016年12月20日 14時