【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？【九条天】 (ページ31)

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30：ずっと続くのページ31

数週間後。

事務所を歩いていると、遠くから歩いてくるAの姿を見つけて、知らず知らずのうちに天は早足になった。

「九条さん。おはようございます」
「おはようございます」

Aが小さく頭を下げたので、天もそれに合わせた。
最近は欠かさず挨拶をしてくれる。前は話すことさえ少なかった。
さすがにもう風邪は治っているだろう。
それにしても、Aはいつも元気がないので見ただけでは体調がよくなったのか、判断できない。

「風邪、引いたって聞いたけど」

天が風邪と口にした瞬間、Aが肩をびくっとさせた。

「え、あ、なんで知って」

隠し事がバレた子供みたいな反応だ。急におろおろし始める。

「熱は下がったの？」

天の問いに、Aはこくこくと何度も、大げさなくらい頷いた。

「さ、下がりました。もうだいじょうぶ、です」

そんなに怖がることはないのに、と天は思った。

――いつまで続くんだろう。

普通にしてほしかった。きっとAは、自分以外の相手にはこんなにびくびくしない。きっと、彼女がこの前語ってくれた“大切な人”には、もっと話をしてくれる。いつだって笑顔を見せているだろう。あのときの彼女は臆することなく話をしてくれたから。

「ほんとに？」

彼女の熱が下がったかどうか、確認したかっただけだ。
少しおでこに触れようとしただけ。

それだけだった。