【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？【九条天】 (ページ26)

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25：捕まえたページ26

その日は久しぶりのオフで、天はいつも通っているドーナツ屋に来ていた。

しかし、店の中にいる客の一人を見て、足が止まった。レジで会計を済ませているのは、どこからどう見てもAだった。そういえばいつだったか楽屋の前にこの店のドーナツが置いてあったことを思い出す。

彼女もプライベートなのだろう。今日は制服ではなく、水色のワンピースを着ていた。相変わらず目立った変装はしていないようで、周りの客がAを見て何やらひそひそと話している。

――まったく。

後輩の世話を焼くような性格でもないのだが、なぜか彼女のことになるといちいち小さなことが気になってしまう。

天は小さくため息をついた。

「あ」

気がつくとAは会計を終えたようで、出口まで来る途中で天を見つけて固まった。さすがに「ひっ」は飲み込んだようだが、口を開けたまま固まった彼女の姿は、天敵に見つかった小動物のようだった。

「こ、こんにちは」
「こんにちは」

Aが上ずった声で挨拶をする。天も目を合わせて返した。

「・・・し、失礼します」

しばらく店先でお互いに一歩も動かなかったが、沈黙にたえられなくなったのだろう、Aが頭を下げてその場を通り過ぎようとする。

――は？

「待って」

それはとっさに口からでてしまった。
ただどうしても、このままAを逃してはいけないと思ったのだ。