【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？【九条天】 (ページ24)

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23：守りたい魅力ページ24

「あたし実は二年ほど留年してるんです」

廊下にある簡易ソファに腰掛けたユウリは笑いながらそう言った。

「体調が悪くて学校に通えなくて。よし！やっと学校に行ける！と思ったときには同年齢のクラスメイトはみんな卒業しちゃってました」

いちいち演技がかっている彼女の声音のせいで、ユウリがどういう感情で話しているのか、天には読み取ることができなかった。

「それで、学校なんて通えるか！って、周りに溶け込めず浮いていたあたしを救ってくれたのがAなんです」

Aの名前に天が顔を動かす。

「彼女の第一声は『ごめんなさい！』でした。あたしの机に見事なまでにお茶をぶちまけちゃって。もう教科書からスマホまで全部水浸し」

そのときのことを思い出したのだろう。ユウリは困った顔をしたが、でも楽しい思い出を語る口調だった。
Aがすぐ謝る癖は、天のせいではなく元々彼女に備わっているものらしい。

「でもそれがきっかけで、あたし学校に行こうって思えたんです。この子のために学校に行こうって。そばで見守ってあげないとこっちが心配になっちゃうんですよね。まあそれから一年、さんざんな目にあってきましたけど。一番困ってるのはA本人なんだろうな」

Aのことを語るユウリの目は、妹を見守る姉のような優しいものだった。

「なんでボクにそんな話」

天が口を開くと、ユウリはとぼけ顔で首を傾げた。ユウリの仕草はちょっとふざけた感じだった。

「え？なぜでしょう？うちのAにはこんな魅力があるんですよ、っていう先輩への売り込みですかね？」

「魅力なの？それ」

ドジで人とうまく付き合えず、いつも何かやらかしてしまう。周りに心配をかける。
魅力、という言葉とは程遠いと思った天の問いに、ユウリは笑った。

「九条先輩があの子の話をこんなに真剣に聞いてくれるんですもん。それがあの子の魅力ですよ」

そう言われて天は、やっぱりこの女を侮ってはいけないと思った。