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21:冷めることない熱 ページ22

楽屋の中。


天の目の前には背を向けたAが立っている。彼女は白いワンピースを着ているが、その背中はファスナーが途中でとまっている状態で、ちらっとワンピースの中が見えた。
ファスナーをつまんで上げる。


「はい」
「ありがとうございます」
「いえ」


なぜかいつもより返答が速くなる。


「お部屋貸してもらってすみませんでした」


Aが小さく頭を下げたのを見て、天は首を縦に振っただけだった。
彼女が音を立てずに楽屋の扉を閉めてでていくと、天はなぜか肩の力が抜けるような気がした。



―――― ―――― ―――― ――――



「あれ、さっきのAちゃん?」


Aがでていったすぐあとに、龍之介と楽が楽屋に戻ってきた。


「なんだ?」


楽も自分たちの楽屋からでてきたAに疑問を持ったようだ。
天はそんな二人と目を合わせようとしない。


「重度の方向音痴」
「あ?」


天がぼそっと口にした言葉に、楽が不思議でならないといった感じで天を見る。


「・・・手がかかる」


天は俯いたままそれ以上何も話さなかった。

22:あの子のこと→←20:怯えないで



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作者名:兎田夏 | 作成日時:2016年12月20日 14時

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