【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？【九条天】 (ページ15)

今日:18 hit、昨日:15 hit、合計:97,265 hit

14：おきざりにしてページ15

それから数日たったある日のこと。

廊下で立ち尽くす一人の少女。

「A？なにしてんの？」

後ろから声をかけられてAは驚いた。

「あ、ユウリ」

振り返るとユウリが通学鞄を肩にひっかけて立っていた。
ユウリは制服の着こなしがうまい。クラスの女子のあこがれの的だ。

「ドーナツ？」

Aが持っている箱を見て、ユウリが首を傾げた。

「差し入れを・・・でもいないみたい」

ユウリが近くの部屋の扉を見ると、「TRIGGER」という文字が目に入った。そこはTRGGERの楽屋の前だった。
どうやら今日はアイラビットもTRIGGERも同じ建物で仕事があるようだ。

「収録中だよ」

浮かない顔のAにユウリは不思議で仕方がなかった。

「急にどうしたの？」
「迷惑かけたから・・・」

Aは俯いて小さな声でつぶやいた。ユウリはAが天に叱られて泣いたときのことを思いだす。Aは先日、迷子になって助けてもらったときのことを思い出していた。

「それでドーナツってどうよ？」
「だ、だってこれぐらいしか思いつかないし。・・・あ、プリンとか！」
「どっちもどっちだよ」

それはどっちもAの好きなものでしょ、と思いながらユウリは笑った。
でもAはいたって真剣な表情だった。

「いいんじゃない？そこに置いといたら」

このままだとしばらく動きそうにないAを見て、ユウリが楽屋の前を指さす。

「気が付くかな」

気が付くかどうかの問題ではないような気もするが、Aが困っているといつも手助けをしてしまうのがユウリだ。

「よーし！そういうときのメモです！」

通学鞄の中から小さなウサギ型のメモを取り出したユウリに、Aは初めて顔を上げた。