【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？？【九条天】 (ページ29)

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68：信じてしまうページ29

Aは一人で廊下を歩いていた。

音葉が来なくなってから一人の仕事が増えた。
気が付けば単独ライブまでもう二か月もなかった。マネージャーが掛け合っているが、ライブは中止になる可能性が高かい。音葉がいなければ、アイラビットのパフォーマンスは成り立たないからだ。

「アイラビットの桜井さんですよね？」

今日は迷子にならずに一人で目的地に着きそうだ、と思っていたAに前方から声がかかる。
突然のことに少し驚きながら相手を見ると、見覚えのない人物だった。ひらひらとした短いワンピースを着た同年代くらいの女の子だ。モデルさんだろうか？

「スタッフさんが探してましたよ。次の撮影の衣装が変更になったとかで。衣装部屋で待ってるそうです」

彼女は明るくて人懐っこそうな笑みを浮かべてAに話しかけてきた。
こういう女の子らしくてかわいい人に、Aは憧れていた。

「ありがとうございます」

なんの疑いもなく彼女の言葉を受け入れる。
衣装部屋の場所は先に確認しておいたので無事たどり着けるだろう。

Aは彼女にお辞儀をしてその場を去った。

―――― ―――― ―――― ――――

衣装部屋に着いた。部屋は開いていて、電気がついている。
中をのぞくと窓のない広い部屋で、奥まで衣装が並んでいた。
背の高い棚がたくさんあるせいで、部屋全体を見渡すことができない。

部屋に入ってスタッフを探してみたが、入り口近くにはいなかった。
どこで待っているのだろう。衣装や小物類の間をかきわけて奥へと進む。

「あの」

だれかいないか声をかけると、すぐ近くで何かが動いた。

「！九条さん」
「なんでキミが」

そこにいたのは天だった。お互いに身を固める。

次の瞬間、突然電気が消えた。