【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？？【九条天】 (ページ28)

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帰宅したAはベッドに座ってスマホを手にした。音葉に電話をかける。音葉が来なくなってから毎日一回は電話をするようにしていた。けれど一度もでてはくれなかった。Aの性格だ。あまりしつこく電話をする気にはなれない。

しかし、今日は違った。天から言われた通り、何度か続けて電話をかける。
でてくれなくてもいい。音葉にこの想いが伝われば。

『・・・はい』

何度目かの挑戦で、音葉の声が聞こえた。
Aは思わず胸を押さえる。
この機会を逃したらもう二度と音葉の声を聞くことができなくなる、と思った。

「音葉？」
『先輩、ごめんなさい』

音葉の声はかすれていた。

「なにか、あったの？」

言葉を間違ってはいけない。Aはいつもより慎重になった。

『A先輩に会いたいです。会ってお話がしたい』

そう言われて、胸がきゅっとなる。Aだって音葉に会いたかった。

『ユウリ先輩の声も聞きたいです』

音葉はいまにも泣き出しそうだ。いつも強気な音葉とはまるでほど遠い。

「会いに来て。待ってるから」

Aは心からそう願った。

――アイラビットは、ユウリと音葉がいなきゃだめ。

『でも・・・』

しかし音葉はそのまま黙り込んでしまった。電話の向こうは静かだった。

『むりなんです。先輩、ごめんなさい』

沈黙のあとに音葉はそれだけを伝えて通話を切った。
ツーツーという機械音がAの耳に残ってしばらく消えなかった。