66：どうしたいの ページ27
「音葉が」
「・・・また来てないの？」
ユウリのときのことを思い出す。またアイラビットに問題が起こった。
それで天のところにきた？
「わたしのせいです」
Aが俯いたので、天はまたため息をついた。つないだ手が熱い。
「ボクはキミの魔法使いじゃない」
天は冷たく言い切った。
Aは不安な気持ちを取り除いてほしいのだろう。
正直、頼りにされて嬉しい。
あんなに怖がられていたのに、困ったときに天のところに来てくれたことが嬉しいはずだった。
「知って、ます」
Aは天に向かってというより、自分に言い聞かせるように小さく呟いた。
遠くに行くと引き寄せたくなるのに、近づいてくると遠ざけたくなる。おかしい。
「キミから連絡はとったの？」
二人でソファに座る。Aは起き上がったままの姿勢で、それ以上動こうとはしなかった。
「でてくれなくて」
「それで諦めた」
天の言葉に、Aが久しぶりにびくっとした。
「もう一回電話して。キミの仲間のことはボクにはわからない」
わざとそっけない態度をとる。
Aとつないでいる手とは反対の手で髪を耳にかけると、少し迷ってから言葉を付け足した。
「キミの声ならあの子に届くかもしれない」
――ボクの声はキミに届いてないみたいだけど。
という言葉を天は飲み込んだ。
「わかりました」
しかし天の気持ちとは裏腹に、Aはしっかりと頷いた。
そんなに信じられるとまた突き放したくなってしまう、と天は思った。
何がしたいのか、自分でもわからない。
Aは結局、話が終わるまで天の手を離さなかった。
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作者名：兎田夏
| 作成日時：2017年1月1日 0時
