深夜食堂へようこそ【WT】

7食目[Nakamu] ページ48

キュッと引き締めた口元で待っていれば
鼻をくすぐる美味しそうな香りがやってくる
目の前に並ぶ品々は見たことある物から無いものまで様々だ

｢お待たせしました､本日はおまかせという事でしたので
色々お持ちしてみました｣

最後の皿を置くと同時に失礼しますと目の前の椅子に腰掛けるAさん
今まで目線を上げないと会話できなかったのが目の前にいる事で
距離が近くなった感じがして気恥しい

｢テーブルの右から
アスパラのポタージュ じゃが芋のガレット スモークサーモン
メインにカジキの網焼きをオイルソースで仕立てました
苦手な物など大丈夫でしたか？お伺いしてなかったので…｣

｢いや！全然大丈夫です！寧ろ､こんなに用意して貰っちゃって…｣

｢最初は驚きましたが､やっぱり料理は楽しいので…
おまかせと言われたら腕がなります
腕を信用して頼んで頂けてるんだなと思って｣

｢いや､正にその通りで…！Aさんのご飯にハズレは無いので！｣

少しの会話で緊張も解れ､じゃあ食べましょうかの声がけと共に
ポタージュに手を伸ばす。綺麗なグリーンの見た目､ふわりと香る
アスパラの濃厚な香り､上に浮かぶこんがりと焼かれたクルトン
全てが食欲をそそるそれにスプーンを落とす
一思いに口に含むと､優しい口当たりと共に
暴力的なまでのアスパラの味が口の中を支配する
それなのに後味はとても優しいミルクが感じられて次々と手が進む
もっと欲しい､と思う気持ちとは裏腹にスープカップは既に空になっていて
少し残念な気持ちが出てきてしまう

｢ふふっ｣

｢えっ｣

｢あっ、ごめんなさい！
余りに美味しそうに食べて頂けるので嬉しくなっちゃって…｣

｢だって､美味しすぎるんです…。美味しいからおかわり欲しいです｣

｢！はいっ｣

何時になくニコニコと笑を零しながら直ぐにおかわりを持って来てくれる
先程感じた､味わった体験なのに2度見て味わっても変わらない感動を
もたらす料理って凄いなと感心しながら2杯目も直ぐに平らげる
ほうっと息をつけば鼻を抜けるアスパラの香りで更に満足してしまう
さて､次は…と意気揚々とフォークを構え､きつね色に焼けたガレットに
プスりと突き刺すとザクッと心地のいい音が鳴り
じゅわりとバターが溶け出す､急いで齧るとこんがり焼けた表面が
パリパリと崩れ中のホクホクのじゃがいもと口の中で混ざりあう
塩気とバターで味付けされているのか芋の甘さが引き立つ
じゃがいもってこんなに美味いのか…

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