深夜食堂へようこそ【WT】

5食目[きんとき] ページ30

指したストローでちゅぅと吸ってみると
口に広がるヨーグルトの爽やかな酸味
空きっ腹を優しく保護してくれる乳製品が今は嬉しい
その中からフワリと顔を出すブルーベリーの甘みと酸味
氷が入っているのか少しシャリシャリとした食感も楽しく
無意識に吸っているとあっという間に半分まで減っていた
俺､こんなに喉乾いてたんだと自分の体の不足した感覚を自覚する

これ､サービスで貰って良かったのだろうかと思えるほど
1品のデザートドリンクとして完成していて思わず唸る
優しいAさんを利用したみたいで居たたまれなくなってしまった
後で､お金を払うウマを伝えようと決めた時
ふわりと香るいい匂いがやって来た

｢お待たせいたしました､ローストポークになります｣

目の前に置かれた四角いお皿の中央に構えるカットされた
ローストポーク､彩り豊かに揃えられた備え付けの野菜
赤い実が混ざった鮮やかなソースがお洒落に掛かっていて
空腹が限界を告げるようにグゥと鳴った

｢うわ､美味しそう…｣

｢本日､ライスの方がノーマルとガーリックライスの2種類ございますが
どちらをお持ちしますか？｣

｢え？選べるんですか？……なら､ガーリックライスで｣

｢直ぐにお持ちしますね｣

そう言ってササッと持ってきてくれた平皿のライスから
ふんわりとニンニクのいい香りが漂って口に唾液が溜まる
早速食べてしまおう､とフォークを手に取りローストポークへと
突き立てた。驚くほどスっと通ったフォークに驚きながらも
ソースを付けて一思いに口にほおりこんだ

まず感じたのが､赤い色のソースから感じる酸味
どうやら酸っぱい系統のソースだったようだ
咀嚼を始めればジュワリと感じる肉の脂､その後を追うように
豚の旨みがやって来てソースと絡み合う
お肉なのに重くなくサッパリとしていて食べやすい
先程まで重いのはキツイかもしれないと考えていた想定を
軽々しく乗り越えて行く味に舌鼓を打ちながら少なくした事を後悔する

そんな自分を恨みながらも止まらない手は非常に素直だ
ライスを掬い､ニンニクとバターの味を楽しみながら
ローストポークの旨味を楽しみ､途中途中で周りの野菜をつまむと
それぞれ違う味が付いていてギョッとする
そんな､ひとりで楽しい食事をしていると無くなるのはあっというまで
気付いた時には既に皿は空になっていた

｢ごちそうさまでした｣

足りないと危惧していたそれは､案外丁度良く
俺の体を満足させてくれていた

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