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最終話 ページ33

【A目線】


事故のあった日から、失っていた記憶を全て取り戻して、漸く私は退院することが出来た。
住み慣れた家に、お兄ちゃんと一緒に帰宅して、自分の部屋に入ると、飾られた写真を見て私は大きな溜息をついた。

「………なんで」

写真に写るのは、私と、お兄ちゃんと、風磨の3人。
どうして、風磨との事だけ綺麗さっぱり忘れてしまっていたのだろうか。

「…酷い事しちゃったよね」

私が記憶を失っていたとき、風磨はどんな顔をして私と接していたっけ。
どうしても、それは思い出す事が出来なくて、思い出すのは優しい顔をしていた風磨の姿ばかり。
でも多分、私にはしんどい顔なんて見せる気はなかったんだろう。
暫く写真を見つめていたら、スマホがLINEのメッセージの着信音を鳴らす。
スマホの画面を見れば、彼からのメッセージ。

『今夜会える?』

短いけれど、そんな一言のメッセージでも、私の心はキュンとして、すぐに返事をした。

*
「……張り切りすぎたかな」

退院してからの初デート。
少し露出のある洋服に、化粧も髪型もバッチリと決めて、風磨のお気に入りでもある香水の香りをふんわりと身に纏い、指には彼からもらった指輪をしっかりと着ける。
鏡に映る自分の姿と睨めっこしていれば、家の前に風磨が到着した連絡が入り、私は深呼吸をして家を出た。
見慣れた車が家の前に停まっていて、サングラスをかけた風磨が車の前に立っていて、ひらりと私に手を振ると助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。
私が席に座ったのを確認すれば、優しくドアを閉めて、風磨は運転席に座る。

「行こっか」

「…うん」





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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時

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