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第11話 ページ20

【風磨目線】


今日も仕事を終えて、Aのいる病院に急ぐ。
もう何度も通ってすっかり道を覚えてしまい、迷う事なくAの病室に到着する。
しかし、ドアを開ければそこには誰もいなくて、静寂に包まれていた。

「…菊池さん?こんにちは」

病室の入り口で立ち尽くしていれば、後ろから声をかけられて振り返る。
そこにはAの担当をしている看護婦さんがいた。

「あぁ、こんにちは。…A、って…」

「屋上…かな?外の空気吸いに行くって10分くらい前に部屋出てったと思います」

「そうでしたか。ありがとうございます」

ぺこ、と頭を下げて、俺は屋上へと向かった。
流石に屋上に行くのは初めてだと思いながらエレベーターや階段を使って、屋上につけばチラホラと患者さんなどが椅子に座って各々好きな場所を眺めている。
その中に見知った背中を見つけて俺は静かに彼女に近付いた。
どこか遠くを見ている彼女の横顔に、どきりとしながらAの名を呼ぶ。
ハッとして振り返ったAは俺を見て「こんにちは」と口を開いた。

「屋上なんて初めてだわ。最近よく来るの?」

「はい。早く出掛けたいなーって…。お兄ちゃんに聞いても、お医者さんに聞いてもいつ退院出来るか、全然わかんないんですもん。大怪我したわけでもないのに…。なんなんですかね」

はぁ、と肩を落としたAは、近くにあったベンチに腰掛ける。
Aが意識的にか無意識にかわからないが、空けられたスペースに俺も腰をかけてAの隣に座った。

「…でも、たまにすごーく頭痛がするんです。そのせいなのかな…、退院出来ないの」

「……そっか」




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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時

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