それでも俺は君を愛してる (ページ8)

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第4話ページ8

2人が黙れば辺りは静寂に包まれる。
中島が大きな溜息をついて両手で顔を覆う。

「……医者にこの後なんて言われるかわかんないけど、俺はAに思い出してもらえるようにするわ。…俺には、Aが必要だから」

「………うん。俺も、…菊池の事楽しそうに話して笑うAが好きだから……。菊池にも、笑っててほしい…」

「………照れさせんなよ、バカ」

中島の頭をペシッと叩けば、中島は「なんだよ」なんて笑う。
中島の笑った顔を見て、Aの笑顔が頭をよぎった。

(……やっぱ、兄妹なんだよなぁ…)

「今日は、もう遅いし帰るよ。Aの事、よろしく。またなんかあったらすぐ連絡ちょうだい」

「あぁ。…気を付けて帰れよ」

「あんがと」

時計を確認すれば22時を過ぎていて、明日もまた仕事だ。
俺の睡眠時間が減る分には構わないが、俺が残ってAの家族達に迷惑をかけるのも良くないだろう。
そう思って中島と別れて、病院を後にした。
病院を出れば、決して強いともいえない風が、俺の頬を掠める。
いつもと変わらない夜空な筈が、今日はやけに切なく目に映る。

「………」

駐車場に停めていた自分の車の前で、ポケットからキーケースを取り出す。
Aから誕生日プレゼントに、と貰ったキーケースだ。

「……っかしいな」

我慢していたであろう涙がゆっくりと頬を伝う。
車のロックを解除して、車に乗り込めばキーケースをぎゅっと強く握り締めた。
エンジンを掛けるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。

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