第2話 ページ4
「………A」
「…おに、…ちゃん?」
「A…?!」
ゆっくりAの瞼が開くと、Aの瞳に俺の姿が映る。
目を覚ましたAは優しい微笑みを浮かべて俺の名前を呼んだ。
「A、痛いところ無い?大丈夫?」
「うん。だいじょーぶ。…お兄ちゃん、泣きそうな顔してる」
クスクスと笑いながら、Aはゆっくりと身体を起こして俺の頬に触れる。
「そりゃ……、大事な妹なんだから……、しょうがないだろ」
Aは「よしよし」と俺の頭を撫でて、楽しそうに笑っている。
今朝と変わらない笑顔を浮かべるAに、ほっと一安心する。
事故にあったなんて、本当は嘘だったんじゃ無いかと思うくらい、今朝と変わらないA。
そう、思っていた。
「そういえばこの指輪、…いつ貰ったんだっけ?」
「…………え?」
「お兄ちゃんだよね?くれたの。…私、お兄ちゃんに紫色好きだなんて話してたっけ」
「……冗談、だよな?…A?それは俺じゃなくて」
「だって、私に指輪プレゼントしてくれる人なんて、お兄ちゃんしかいないでしょ?」
ポタリ、と目元に溜まっていた涙が溢れた。
今朝と変わらないなんて、嘘だった。
「お兄ちゃん?」
「中島ッ!Aは…!」
俺が1人で混乱していれば、急に病室のドアが開いて、慌てた様子の菊池がやってきた。
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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時