第8話 ページ14
【健人目線】
「Aさんの記憶ですが…、一時的な記憶喪失かもしれないですし、このまま…戻らない可能性もあります。…日常生活を行う事は出来るようなので、…健人さんの言う通り、彼氏さんの事だけ多く失われてしまっているようですね……。何故その一部の記憶だけなのかは、…全くわかりませんが……」
Aの担当をしている先生と、個室で話を聞けば、やはり菊池との記憶だけは強く忘れているらしい。
生活を送る上で必要な事はしっかりと覚えているから、退院はそのうち出来るようで。
「失礼ですけど……、彼氏さんと上手くいっていないなど、彼氏さんと関わる事でAさんにストレスがかかるような事は…」
「それは、全く無いです！絶対、そんな事……。Aは彼氏の話する時も、俺が嫉妬するくらい幸せそうな顔して惚気話するし、彼氏の奴だってAの事昔から可愛がってたし……。事故の日だって、記念日に貰ったって、Aは嬉しそうにしてました……」
「…そうですよね。失礼しました…」
俺の勢いが良すぎたせいか、先生は一歩引きながら俺を見て、静かに頭を下げた。
俺も熱くなりすぎたと、頭を下げ返す。
「それだけ、幸せなようでしたら……。彼氏さんとの些細なことがきっかけで、記憶が戻る可能性もあるかもしれません。……彼氏さんには、少し辛い事かもしれませんが、Aさんの為にも、少しでも多くAさんと一緒に過ごしてみるのも良いかもしれません」
「本当ですか？！」
「あくまでも可能性の話ですので…。それだけは、覚えておいてください」
「わかりました。ありがとうございます」
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作者名：ルイ | 作成日時：2019年5月26日 20時
