【黒バス】R【黒子テツヤ】

「M」 ページ14

私の帰る場所は、表参道駅から歩いて12分くらいのとこにある。


高層マンションにある1室のドアを開けて帰りを告げると、Mちゃんの地獄から這い出たような「おかえり」が返ってきた。

このカードキーを使うようになって、そろそろ半年。


元の家の匂いなんか、とうに忘れてた。

『女子中高生に聞いた！将来住みたい理想の部屋』みたいな、整理整頓されて、家具も全部可愛い、この部屋。


ソファにスクバを投げ出した。




自分でも、そうとう恵まれていると思う。


女子が憧れる生活が、今の私の日常だって思う。


美容師であるMちゃんは、私を2度、拾い上げてくれた恩人だった。

こんなカリスマ性も何も無い私を、まるで宝石の原石のように見せる。


私は、もともとよくいるちょっとませた女の子だった。

小4のとき、ある雑誌のモデルオーディションに親への相談も無しに応募して。

3個目くらいで、最終審査通って、ようやく母親に話したけど、頭の固い親は「芸能界は汚れている」なんていう、偏見で固められた意見で私を否定した。



それでも無理くり言いくるめて、結果受かって。

小６の春まで、モデルやったけど。


人気もなんも出なくて。

自分でも薄々気づいてたけど、私には、オーラみたいなのがなかった。

顔はいい方だと思う、けど。


学年に1人はいる可愛い子、みたいな。


その時の私は今思い返すと死にたくなるくらいウザい性格をしてた。

よくいる委員長タイプ？

変なとこ真面目だけど、自分の非を認めないやつ。

のに、すぐ調子乗る。


そういう、根っからのクズさがにじみ出た顔してるからか、全く支持されなかった。


んでそのまま自然に消えて、普通に中学行こうってなったけど。


小6終わったあとの春休み、表参道で、Mちゃんが声をかけてくれた。

「サロンモデルやりませんか」って。

その事思い出しながら、目の前で眠気に体を揺らすMちゃんを寝転がして布団を引っ張ってくる。


本人曰く、「体がデリケートだからエアウィーヴのマットレスで寝なきゃいけない」らしいけど、週に一回はこのローテーブルの前で眠りについてる。


そういうときは、ベッドに運ぶ力もないし、とりあえず寝かせて布団かけて朝まで放置。


次の日には体の節々の痛みを訴えながら出勤してく。


私が知ってるのは、神永百亜じゃなくて、「ゴッドハンド」なんて言われてるカリスマ美容師「Mちゃん」だけ。


この人はいつでもヒーローだから。

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