9.細かく確認する ページ9
「俺の、着る?」
ゼンは自分のツナギ――この会社のツナギは上下分別型のものと、上下一体型の二種類を社員に配布しているのだが、今日は上下別れているものだった――の上着を指した。
肩の部分の布地を引っ張り、着るかどうかをリエに問う。
質問されたリエはドキッと心臓を跳ねさせ、さらに顔を真っ赤にした。耳までもが赤くなって熱を帯びる。
「え、でも、その……」
二十歳にもなって、何故おっさんの上着を借りねばならぬのか。
リエはそう思ったが、このままの状態でいるのもどうかと思ったので、頷いてしまった。
それに、お前のなんか着るかばーかっ! と言える雰囲気でもなかったのである。それに社員からの優しい提案を否定するのは、社長としてあまりにも無礼かなと判断したのだ。
ゼンはチャックを上から下げて、ポケットに何か入っていないか、作業に使っていたらしき?、安全ピンが留められていないかを細かく確認する。
中には黒色のヒートテックのようなものを着ていた。肌に密着するタイプのものだったので、ボディラインがわかる。照明に当たると体の陰影がはっきりするので、鍛えられた体であることがわかる。
三十代のおっさんにしては良い体だなとリエは思った。
上着に何もないことが確認できたので、ゼンはごそごそと片方の袖から腕を抜いた。しかし、その筋肉で盛り上がった太い腕を見て気付く。
半袖じゃん、と。
この寒い季節に半袖。まだ十月の頭とか、ジムで運動しているのなら分からなくもないが。リエは半袖であることに気付いたので、片方の袖も脱ごうとしているゼンを止めた。ドアの隙間からはっと腕を伸ばし、するすると袖の中に入っていく手を握る。
「寒くないのか、ゼンは?」
私のせいで風邪をひかれても困る。というか、半袖であったことにドン引いている。
「俺よりお前優先だろ。女は低体温症になりやすい」
「私を女扱いしてくれるのは至極光栄なことだが、社員に風邪を引かれて困るのも私なんだがな」
「俺の平均体温は三十七度以上」
「どうでも良い情報言って何になる」
リエは肩をすくめ、溜息をついた。
「もういい、社長室のオートロックの番号言うからコートをとってきてくれ」
「鍵と番号いるだろ。鍵は?」
「……OH」
半研究室、半会議室に置いてきてしまった。
秘密事項が何点か書かれた手帳にはさんである。誰にも見せられない。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
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しまくろしるる(プロフ) - レイチェル・ハジェンズさん» はい、のんびり応援します!レイチェルさんも自分のペースで書いていってくださいねー (2016年11月27日 0時) (レス) id: 5ed7260065 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - しまくろしるるさん» うぎゃー! しまくろしるるさん、御無沙汰しております。読んでくださり、ありがとうございます。頑張って書いていくので、楽しんで読んでもらえると嬉しいです。 (2016年11月25日 21時) (レス) id: f158aaa837 (このIDを非表示/違反報告)
しまくろしるる(プロフ) - 新作おめでとうございます!!すごく面白そうなので楽しみにしてます!! (2016年11月25日 20時) (レス) id: 5ed7260065 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作成日時:2016年11月24日 22時