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永嗣くんに抱き着くAさんを是れ以上視界に入れたくなかった俺は点検作業を行う為に其の場から離れようとした時、長谷部さんと篤人くんが格納庫に足を踏み入れ俺達の方へと近付く。
「何やってんだ?二人共」と御尤な台詞を口にする長谷部さんに永嗣くんが説明を施すと「Aちゃんもウッチーの祝賀会に来てくれるなんて嬉しいな」と長谷部さんは何の憂いも無い笑顔を浮かばせる。
何時も真っ直ぐで女の人が喜ぶような台詞を偽り無く言葉にする長谷部さんと、其れを耳にして頬を染めるAさんの姿にはもう、慣れた。
「Aちゃん、今日も…」
「おい、白たい焼き」
長谷部さんがAさんに話し掛けた瞬間、其れを遮るかのように篤人くんが口を開く。
篤人くんが放った言葉の意味を理解していない俺達と反比例するかのように『だから白たい焼きじゃないってば!』と言い返すAさんを見て、篤人くんは端整な顔立ちを崩しながら笑い声を上げた。
「あー、おもしれぇ」
『…あのさ、…この前はありがと』
篤人くんは俯きながら小さく呟いた彼女の言葉を訊き逃す事無く「ん。」と穏やかに微笑んだ。
「ウッチー、この前って何だ?」と無垢に問い掛ける長谷部さんと意味深にニヤニヤしている永嗣くんを篤人くんはスルーして、Aさんから整備報告書を受け取り格納庫を後にした。
「…"この前"って何ですか?」
休憩室で寛いでいるのは点検作業を終えたAさんと俺だけで問い質すか否か迷った挙句、俺の唇は前者を選んだ。
『"この前"?…あー!あいつとお好み焼き屋さんで偶然逢ったんだよね』と彼女が行き着けだと云う店で篤人くんと遭遇した事を教えてくれた。
『それでねー、その後家まで送ってくれたの』
「……は?」
『だからさっき改めてあいつにお礼言わなきゃって思ってさ』と至極気にする事なくAさんは言葉を紡ぐ。
俺の気持ちなんて知る由もない彼女に少しの苛立ちを覚える。
「…近いうちにその店一緒に行きましょ」
『うん!めちゃくちゃ美味しいから、岳ちゃん絶対気に入ると思う』
ここ数週間で一気に彼女との距離を詰めてきた篤人くんに焦りを感じたからなのか。
篤人くんが彼女に好意を抱いているのか明確な答えは表れていないのに。
だけど人間、嫌な時ばかり予感は的中する訳で。
彼女の笑窪を埋めるのは他の誰でもなく、俺だけであってほしいと願った。
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ami(プロフ) - YULYさん» こんばんは!あちらの作品読まさせていただきました!次の展開が気になって、ドキドキワクワクしてます! (2015年10月9日 19時) (レス) id: 420a20c751 (このIDを非表示/違反報告)
YULY(プロフ) - agnellaさん» agnella様、先日は此方と彼方にもご感想を下さって有難うございました♪agnella様から2つもご感想を頂いてとっても幸せです(照)パイロット内田さん、そして一途な内田さんをお好きになって頂いて大変嬉しいです♪新章でも宜しくお願い致しますね♪ (2015年10月9日 17時) (レス) id: 25f226d759 (このIDを非表示/違反報告)
YULY(プロフ) - amiさん» ami様、こんばんは♪先日も御丁寧にコメントを有難うございました(*´-`*)今夜は約1週間振りにあちらの作品を更新させて頂くので是非ご覧頂けたら幸いです。それでは、また♪ (2015年10月9日 17時) (レス) id: 25f226d759 (このIDを非表示/違反報告)
agnella(プロフ) - パイロット内田、かっこいいです!!!!!!!一途な内田さん、嫌いじゃないです(*^_^*) 続きが気になります。これからも頑張ってください。 (2015年10月5日 1時) (レス) id: 9be3da9e01 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - YULYさん» おはようございます!はい!読まさせていただいてます!こちらの作品の更新も楽しみにしてます!岳さん頑張って欲しいです! (2015年10月2日 8時) (レス) id: 420a20c751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YULY | 作成日時:2015年7月22日 6時