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思い返せば数時間前の私の人生からは到底想像もしていなかった事が次から次へと起こっている訳で。
迷路のように目まぐるしく廻る思考回路を落ち着かせる為に、車窓から見える鮮やかな景色に全神経を集中させる。
其れから、彼の愛車が高級ブランドメーカーだと云う事は自動車に疎い私にだって理解出来た。
…だって、運転席が左側だったから。
窓硝子に映る運転席の彼が少しだけ格好良く見えたのはきっと、何かの間違いだ。
…きっと、きっと。
『あっ、この曲って…』
車内に優しく流れるのはAriana Grandeの"Cadillac Song".
「知ってんの?これ」
『うん、アリアナグランデの曲の中でも結構好き』
「マジ?俺もなんだけど」
短い間だったけれど嬉しそうに歯並びの良い白い歯を見せながら彼は此方を見て微笑む。
偶然にも彼と同じ曲が好きだと云う事実に少しだけ心がときめいたのはきっと、何かの間違いだ。
…きっと、きっと。
気付けば見慣れた街並の中を走っていた。
首都高から瞬く間に流れる機械的な輝きは無くなり、其れと引き換えに蛍の光のような囁かだけど美しい輝きが辺りを照らし出す。
「…ここがお前の家?」
『うん。それがどうかしたの?』
「俺の家と超近いんですけど」
驚く私を見詰めながら彼は、ふっと笑い「俺、あそこに住んでる」と指差した其の先に聳え立っているのは超が付く程の高級タワーマンションだった。
高級外車だけではなく、住んでいる家まで高級な彼に開いた口が塞がらない。
「俺達、超ご近所じゃん」
そう、彼と私が住んでいる自宅は目と鼻の先にあるけれど彼の自宅は超高級、私の自宅は何処にでもあるような安いマンションで。
そんな私の気持ちなど露知らず、彼は目尻に皺を寄せて笑みを零す。
「今日からご近所物語の始まりだな」
『えっ?』
助手席から降りてドアを閉める私を確認した後助手席の窓を開けて、ふっと笑みを零しながら彼が呟く。
「おやすみ、A」
今日一番の優しく穏やかな笑顔を見せた彼は車を走らせ去って行く。
彼に初めて名前を呼ばれた事に気付いたのは、彼が乗っている車が黒に覆われた夜に消えた後だった。
私の姿は夜に覆われ、然して私の心は彼に侵食されていた。
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ami(プロフ) - YULYさん» こんばんは!あちらの作品読まさせていただきました!次の展開が気になって、ドキドキワクワクしてます! (2015年10月9日 19時) (レス) id: 420a20c751 (このIDを非表示/違反報告)
YULY(プロフ) - agnellaさん» agnella様、先日は此方と彼方にもご感想を下さって有難うございました♪agnella様から2つもご感想を頂いてとっても幸せです(照)パイロット内田さん、そして一途な内田さんをお好きになって頂いて大変嬉しいです♪新章でも宜しくお願い致しますね♪ (2015年10月9日 17時) (レス) id: 25f226d759 (このIDを非表示/違反報告)
YULY(プロフ) - amiさん» ami様、こんばんは♪先日も御丁寧にコメントを有難うございました(*´-`*)今夜は約1週間振りにあちらの作品を更新させて頂くので是非ご覧頂けたら幸いです。それでは、また♪ (2015年10月9日 17時) (レス) id: 25f226d759 (このIDを非表示/違反報告)
agnella(プロフ) - パイロット内田、かっこいいです!!!!!!!一途な内田さん、嫌いじゃないです(*^_^*) 続きが気になります。これからも頑張ってください。 (2015年10月5日 1時) (レス) id: 9be3da9e01 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - YULYさん» おはようございます!はい!読まさせていただいてます!こちらの作品の更新も楽しみにしてます!岳さん頑張って欲しいです! (2015年10月2日 8時) (レス) id: 420a20c751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YULY | 作成日時:2015年7月22日 6時