ちびりゅの病系短編集さーど

4 ページ16

丈一郎side







「流星？息しんどいなぁ？ちょっと辛いけど我慢してな？」








流星に掴まれたシャツの裾がぎゅっと皺になる。








肺に入る酸素を制限して息を吐けるようにしてやる。








少しずつ、規則性が戻ってきた。








呼吸に合わせて背中を摩って。








「っ、じょ、くっ、」








「うん、丈やで？大丈夫や、すぐ戻るからな？」








ぎゅっと、首に腕を巻き付ける流星の背中を撫でる。








普段は頼もしい流星の背中は弱々しく、小さかった。








流星がこんなに怯える理由は分からへん。








過去になんかあったんかもしらん。








けど、なにか悩みが、苦しみがあるなら助けてやりたい。








俺らには言われへん何かを背負ってるんかもしらんけど、少しぐらいそれを分けて欲しい。








流星は大切な後輩。








しっかりしすぎてるから、本気で抜けたとこなんて見せへんから。








やから、心配になんねん。








流星の本音をこぼせる場所はどこ？







できるなら、俺がその場所になってやりたい。







なにわ男子の最年長として、流星の活躍をずっと見てきた身として。







流星の支えになりたい。








そんな想いを込めて流星の背中に添えた腕に力を込めれば、それと同時に電気がついた。








「流星？もう大丈夫やからな？」







肩に顔を埋めてこちらを見ようとしない流星。








そっと剥がして、涙の跡を親指でなぞった。








「流星、大丈夫。俺がおる。」








何度目かわからん「大丈夫」








語彙のない俺にはこれぐらいしか流星を安心させてやれる言葉を知らん。







あとは態度で示そう。








動き出したエレベーター。








流星の手を、離さないとでも言わんばかりに力強く握りしめて。








背中を支えながらゆっくりと車へ向かう。








何があっても隣におるから。








不安なことがあるなら支えるから。









やから、頼ってや。









助手席に座る儚い笑顔に向かって、心の中でそう呟いた。






END

「年下」→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す