ちびりゅの病系短編集せかんど

弱い姿 ページ12

大吾side






目の前で痩せ我慢してる小動物。






取材の合間にスタジオの隅で小さな椅子に腰掛け背中を丸めて服の裾をシワになるぐらい握り込む。






これが無理しとる以外の何者に見えるって言うんやろか。






幸運なことに今日のメンバーは流星より先輩ばかりや。






どうにかして休ませることもできるやろ。






これで後輩がおったら何言うても聞かへんねんけどな。






そんなことを呑気に考えよったら流星の背中が小さく波打った。






流星が椅子から転げ落ちるように床に座り込んだせいで椅子ががたんと音を立てた。







手で口元を抑えてなんとか耐えとるみたいやけど時間の問題やろ。






タオルと袋を用意して近付いた。






さっきの音のおかげでスタッフさんやほかのJrも流星の体調に気付いたみたいで遠巻きに心配そうに見ている。






1番近くにおった丈くんとアイコンタクトを交わして流星に声をかけた。







「流星、これあてとき」







タオルを渡してゆっくりと立ち上がらせる。







けど少しの刺激の流星には厳しいようで、1本踏み出す度に背中が震えて涙が零れていく。








「あとちょっと我慢な？」






人の目を気にする性格やからせめて、ってことで廊下まで連れ出してきた。






落ち着いたら楽屋まで連れていきたいねんけど…







当分無理そうやわ。






立ち止まった瞬間に袋に戻し始めた流星。







俺は背中を摩ってやることしかできん。







どれくらいたったやろうか。







「…っ、も、ええ」







ぐったりと壁に背中を預けて肩で息をしている。







「そっか、じゃあこれ捨ててくるから待っとってな？」






袋と汚れてしまったタオルを持って立ち上がれば弱々しくごめん、と呟いた流星。







「気にせんといて？今は休んどき」







それでもまだ気にしている様子の流星を撮影が終わった正門に任せて後ろ髪を引かれながらその場を離れた。

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