六条家 の段:4 ページ18
〜次郎丸side〜
我が六条家だが、代々当主は女人となっている。
理由は、大陸より伝わる暗殺者、"毒娘"を造り上げるためだ。
あと、女は子供を産む。
産まれた子は毒に強く、また生まれながらの毒持ちになるからな。
毒に強い、毒を持つ。
このためだけに、禁断の交わりを繰り返したんだ。
俗にいう近親婚。父上は、母上の兄らしい。
まあ、結果、一族は揃いも揃って気狂いだらけ。
従兄弟も、従姉妹も。
俺も、兄上も、父上も、現当主である母上もだ。
三郎丸は違うぞ。三郎丸はまともだ。
さて。
そんな六条家に生まれた長男は、脚が悪く、頭痛持ちで人の悲鳴を聞かなきゃ収まらないときた。
役立たずだ。
次に生まれたのは、男女の双子。
待望の女児だというのに、よりによって男女の双子だ。
前世で心中しただとか、畜生の子だとか、とにかく不吉極まりない。
だが、母上は一計を案じた。
「なにをした？」
三郎が険しい顔で問う。
雷蔵の顔でよくもまあそんな顔できるもんだ。
「丁度、年の瀬でな。俺を産んだ後に、あの人、日を跨いで三郎丸を産んだんだ」
「確かにそうすると一学年ズレる……」
兵助は納得している。
そう。
そうやって、あの人は、双子ではないとした。
「おまけに、だ。三郎丸と名付けた上で男として育てることにしたのさ。役立たずの長男、粗暴な次男に続いての大人しい三男としてな」
だが、これのおかげで三郎丸は今日まで生きている。
本来ならば産まれた瞬間殺されるか、捨てられるかだったのに。だ。
「三郎丸が、初めての夏休みの時だ。あの人は子が産めなくなっていた。毒の服用と、近い血族による交わり。できるはずがない。だから、三郎丸を六条家最高の毒娘にしようとしやがった………！ 男として育てられ、男の名しか与えられていないのに、だ！」
「だから、二年前から私に預けたのですね」
落ち着いた声で滝夜叉丸がそう言った。
「ああ、そうだ。お前と田村、綾部のことはよく聞いていたからな。八んとこと悩んで、同い年且つ複雑な家庭環境だと理解の早いお前にしたんだ」
滝夜叉丸の家も、まあまあややこしいからな。
八は、三郎丸がずいぶんと懐いていたから。
今も懐いてるし。
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作者名：架空以内 | 作成日時：2024年3月17日 20時
