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私はこの人の表面しか見ていなかった。
真っ直ぐな
彼の言葉や
彼の行動は
そのままいつだって彼の感情なのだと
そんな愚かな先入観を疑問にも思わず
この十何年もの間「煉獄杏寿郎」という人を
悩みも苦しみも悲しみも一切感じさせない彼を
太陽のようだと勝手に遠い存在として扱って。
彼が使命ある者ゆえの苦しみを味わっていたのに
私は空白の十数年の彼の人生を
知ろうともしなかった。
同じ人して―
彼の許嫁であり 幼馴染として
向き合おうとしていなかった。
「私―」
左頬に涙が伝う。
目の前の彼はもう太陽ではなくて
今ほど境遇の違いを気にも留めていなかった
幼いあの頃の私が覚えている
何も変わらず
温かくこちらを見つめる幼馴染の男の子だった。
ふわっと大人の彼の匂いが近づいて
私の目からこぼれてしまった涙を
指でふき取ってくれた。
彼のその腕が私の背中に添えられて
先程よりも柔らかく抱きしめられる。
「二日後―
君の姉が目覚めた後に返事を聞かせてくれ」
離れる間際、
私の耳元で告げたその声には
今まで彼が宿す炎に気を取られて
気づくことのなかった
控えめに漂う煙のような
掴みどころのない感情が混ざっているように思えた。
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昨夜はけが人が多く出たらしく、
先程より蝶屋敷内は慌ただしくなっていて、
両親の待つ部屋の戸を開けると
二人とも一斉に振り向く。
「紫・・・」
元々隊士を預かる蝶屋敷に
藤の花の家紋がお世話になるわけにはいかないから
父の治療の付き添いと料理の手伝いで母だけは残るが
今晩は水柱邸に泊まらせていただきなさい
と早口に父から告げられる。
許嫁の解消ともなれば、
もう私だけが杏寿郎様の屋敷に泊まる理由はない。
「菖平さん、俺に紫を
送り届けさせてもらえないだろうか」
「任務帰りに・・良いのですか、杏寿郎様」
「うむ！道中何かあっては困る。」
外でどことなく雲が立ち込める空を見上げる。
杏寿郎様は彼の鎹烏に道案内を頼み
胡蝶様に菫姉さんが目覚めたら
水柱邸に鴉を飛ばしてくれとお願いしてくれた。
「疲れているだろうが、歩けそうか？」
「はい、大丈夫です」
正午近いというのに暗い空の下
二人で歩き始めた。
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いろ(プロフ) - satoさん» 読んでいただきありがとうございます！更新頑張っていきます^^ (2021年4月13日 22時) (
レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)
sato(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。推しのお二人なのでとても楽しいです！そして、寛三郎の菓子の寝言には可愛さが溢れました^_^更新楽しみにしております。 (2021年4月12日 16時) (レス) id: 7113727fb0 (このIDを非表示/違反報告)
いろこ(プロフ) - にゅーとさん» すごく嬉しいお言葉ありがとうございます！！これからも少しずつですが、頑張って更新していきます^^ (2021年4月4日 23時) (レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)
にゅーと - はじめまして！今日初めて拝見させていただいたのですが面白くて一気に見てしまいました！推しの2人なのでとても嬉しいです。更新頑張ってください！ (2021年4月3日 14時) (レス) id: f2a9229dc1 (このIDを非表示/違反報告)
いろこ(プロフ) - 凪子さん» 読んでいただいてありがとうございます！あたしも二人が大好きです^^ (2021年3月22日 20時) (レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いろ | 作成日時：2021年3月8日 14時
