許嫁 （上）【煉獄杏寿郎】【冨岡義勇】

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「もしかして杏寿郎様の鴉がここまで？」





見上げると彼と目が合う


ほとんどいつも通りの笑顔だった




「あぁ、彼は要というんだ」





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別室で杏寿郎様と両親とともに暫く待っていると

この屋敷の主という蟲柱様が来られた。




「お嬢様は稀血でほぼ間違いありません」




胡蝶しのぶ様と名乗られた蟲柱様は


部屋の隅でこちらの様子を
真っすぐ見つめる杏寿郎様に微笑む。




「あら、煉獄さんもお付き添いでしたか」




「ええ、実は煉獄家の皆様には
代々お世話になっておりまして」


父が説明する。




「そうでしたか」とにっこり笑う胡蝶様は

とてもお美しかった。




「お嬢様は多量の出血で今も眠っていますが、
明日か明後日には意識も回復するでしょう」




「本当に・・」




良かった、姉さんは助かったんだ。


と目の前がさっきよりずっと明るくなる。




「本当に、姉の命を救っていただき―
ありがとうございました」



胡蝶様と、そして杏寿郎様に精一杯礼をする。






「鬼殺隊として守るべき、救うべき命を
ご家族の元に帰すことができて本当によかったです」








藤の花を克服する鬼の調査は進んでいて

今後の対策として鬼殺隊本部及び藤の家、

稀血の人々を守るための藤の花の
品種改良を試みると仰った。



花柱だった御姉様が元々植物学に精通しており


より生命力の強い西洋の藤の効能について

手記が残されているとのこと―







「ところで、その怪我はどうしたんだ？」




胡蝶様が部屋を出られた後

開口一番杏寿郎様が父に聞いた。




「実は私たちも昨夜寝込みを鬼に襲われました」




「なんと！！」





寸分の一の速さで杏寿郎様が私に視線を移す。



彼が私の頭からつま先まで怪我がないと確認する傍ら

父がうちの屋敷の件について触れる。




「大変急なお願いではございますが、
紫は杏寿郎様の御屋敷に
お泊めいただけないかと思うのですが。
近々嫁がせていただく娘ですので―」







今の私はやけに杏寿郎様の感情に機敏なっていて



父の言葉に彼の目の奥で何かが揺れたのも気づいた。







「その件だが」






こんな事態の最中伝えるのは


控えるべきと承知の上、と前置きをする。








「俺と紫の許嫁は解消となったようだ。」








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