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手持ちの茶菓子を鴉に食べさせてやり、

知り損ねた彼の好物を聞いてみると、教えてくれた。



(鮭大根・・・か)



大根は沢山ある。鮭が手に入れば作れそうだった。



水柱様とは別の部屋で家族で食事を済ませると
父はまだ熱の下がりきらない私に、
早めに寝なさいと言う。


だけど、夜は一層暗い部屋に戻るのは気が進まず

気づけば菫姉さんの部屋へ足が向いていた。


今では
私が祝言で着る振袖や、嫁入道具を置いている。



それらを横目に見ながら、
いつも姉さんがいた鏡台の前に座る。



被害に遭ったのは「藤の花の家紋の者」と聞いた。

それは、その家紋の屋敷に住む者なのか、
それともその一族を狙ったのか分からない。



もし一族を狙っているとしたら―



良家との結婚も
鬼殺隊にこうして守ってもらえる、
藤の花の家紋として生きる人生も選ばず、

美容師になるという夢を追って
単身東京へ出ている自慢の姉。


鏡台に置いてある古い簪を胸に抱える。



「菫姉さん・・・どうか無事で・・・」



視界が潤んでいるので気づかなかったが


微かな音に顔を上げると


鏡には、
開いた襖からこちらを見る水柱様の姿が映っていた。



咄嗟に目頭をおさえ振り向くと、



彼は風呂上がりと思わしき姿で腕を組み

部屋の脇へ視線を逸らしていた。



「姉がいるのか」



「聞かれてしまいましたか・・」



「通りすがりだが」



「ええ、東京にいるんです。寮に一人暮らしで・・」




「そうか」




水柱様はそう言うと、背中を向けた。


「藤の花の家紋の者は全員鬼殺隊が
把握しているはずだ。心配することはない」



父も母も触れなかった姉さんの身の安全のこと


その短くも優しい励ましの言葉に

またしても心が解れるようだった。




「それと― 鴉に茶菓子はやらないでくれ」



そう仰ると、私が慌てて詫びるのを待たずに
廊下の闇に消えてしまった。





翌朝起きると、大分日が高くなっていた。
その眩しいほどの陽光に安心する。

体調はすこぶる回復していた。



「紫、水柱様はお休み中よ。
起こさないように音には気をつけなさい」


母にそう言われて、初めて気づく。



(夜通しの警備だった。昼間寝ているのね)




「うん。今夜は私も食事の用意手伝うね」


「あら、何か作ってくれるの?」


「鮭大根が良いかなって」



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄さん , 義勇   
作品ジャンル:アニメ
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いろ(プロフ) - satoさん» 読んでいただきありがとうございます!更新頑張っていきます^^ (2021年4月13日 22時) (レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)
sato(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。推しのお二人なのでとても楽しいです!そして、寛三郎の菓子の寝言には可愛さが溢れました^_^更新楽しみにしております。 (2021年4月12日 16時) (レス) id: 7113727fb0 (このIDを非表示/違反報告)
いろこ(プロフ) - にゅーとさん» すごく嬉しいお言葉ありがとうございます!!これからも少しずつですが、頑張って更新していきます^^ (2021年4月4日 23時) (レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)
にゅーと - はじめまして!今日初めて拝見させていただいたのですが面白くて一気に見てしまいました!推しの2人なのでとても嬉しいです。更新頑張ってください! (2021年4月3日 14時) (レス) id: f2a9229dc1 (このIDを非表示/違反報告)
いろこ(プロフ) - 凪子さん» 読んでいただいてありがとうございます!あたしも二人が大好きです^^ (2021年3月22日 20時) (レス) id: aed08086d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いろ | 作成日時:2021年3月8日 14時

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